日本サッカー界の新リーダーはJリーグを再生できるか。3月に就任した元J1札幌社長の野々村芳和チェアマン(50)のインタビュー最終回では、〝元Jリーガー〟の肩書を生かし競技のさらなる発展に取り組んでいくことを明かした。


 ――チェアマンに就任して約4か月。各方面から要望が殺到しているのではないか

 野々村チェアマン(以下野々村)各論から総論まで。その中で要望に応えられるものは対応していきたい。いろいろな意見がある。カズ(三浦知良=55、現JFL鈴鹿)さんからの要求? 全然ないよ。何か話したかな。新幹線の中で「日本サッカーのために頑張ってよ」と。「俺らは現場で頑張るからさ」って。そんな感じ。出身の静岡・清水東高OB?(日本サッカー協会技術委員長の)反町(康治)さんや(Jリーグ特任理事の内田)篤人とか理事会で会うけど良好だよ。

 ――静岡・清水といえば、日本屈指のサッカーどころだ

 野々村 静岡の先輩、清水東OBとか清水で育った関係者とも話をしている。清水の雰囲気とか、そこに(Jリーグ再生の)ヒントがあるんじゃないかと。静岡や清水の空気感は子供の力を伸ばしたし、サッカーが好きな人を増やした。そういう空気感を全国にどうつくるかが大事なんじゃないか。そのために意見を聞いている。

 ――精力的だ

 野々村(清水は)やっぱり自然とサッカーに触れられたし、自然に頑張ろうと思えた。子供のころから競争があったし。メディアの環境も…子供から大人まで露出するサッカー番組があって、毎週末に番組を見てからサッカーをしに行くのが楽しくて。いつか「俺も番組に出たい」っていう動機づけだった。一人の力で(清水のように)なるとは思わないけど、キーパーソンがいると、再現性が上がるかなって。


 ――放映権について

 野々村 ビジネスはきれいごとだけではできない。放映権にもっとも直結するのはトップ10とか、J1の価値。ここを伸ばすには上(のチーム)に頑張ってもらわないと維持できないし、放映権料も上がらない。今まで横並びが多い感じだったが、ここは競争の世界。そういう仕組みにしないといけない。世界と伍していくには、もっと競争しないと。

 ――Jリーグにとって放映権は生命線だ

 野々村 サッカービジネスで放映権が大きなウエートを占めている中でも、日本は独特。無料で見られる地上波をどう活用していくか。そこは欧米各国の感覚とは違うものがある。(地上波の)プロモーションも組み合わせて、どうファンを増やしていくか。一緒に考えていきたい。

 ――6月の格闘技イベントで25億円も稼いだPPVについては

 野々村 そこも必要だし、伸びていくところでしょう。Jリーグはどこが優勝するかわからないのが魅力なんだけど、飛び抜けたナショナルクラブがまだ確立されていない部分がある中で、トップをどう伸ばすか。例えば、2番目に好きなチームがあってもいい。1番が札幌なら、2番は他クラブとか。2番目のクラブができれば、全国ネットでのコンテンツとしても成立するはず。多くの人が関心を持つチームが出てくれば、課金してくれる可能性はある。(終わり)

 ☆ののむら・よしかづ 1972年5月8日生まれ。静岡・清水市(現静岡市清水区)出身。幼少からサッカーを始め、地元の清水東高から慶応大へ進学し、95年に市原(現千葉)入りした。2000年に札幌へ移籍するも01年シーズン後に現役引退。09年に道央リーグの小樽FCで現役復帰し、11年までプレーした。13年に札幌の社長に就任。22年3月に第6代Jリーグチェアマンに就いた。175センチ、67キロ。