【取材の裏側 現場ノート】ゼロワン10日の両国国技館大会で〝炎の戦士〟こと大谷晋二郎がノア・杉浦貴との世界ヘビー級王座戦で起きたアクシデントにより救急搬送された。記者は別の取材中で、試合会場にいたわけではないが、どうしても人ごとには思えなかった。

 北京五輪を終え、冬季シーズンがひと区切りついたところで最近はプロレスの現場に行く機会が増えていた。そうした中、大谷を初めて取材したのは先月6日の後楽園ホール大会。〝黒いカリスマ〟蝶野正洋がデビュー30周年イヤーを迎えた大谷に対し、本紙を通じて「選手に専念するのか事務方を勉強していくのか決断すべき。二刀流は終わりだ」とコメントしたことを受けて、本人を直撃するというものだった。

 プロレスについてはまだまだ勉強中の立場。不安を感じつつ質問をぶつけたが、こちらの意図を理解してくれたようで率直な思いを明かしてくれた。

 そこから〝本題以外〟にも話は広がった。今年、設立21周年イヤーを迎えた団体には「旗揚げのときからのレスラーは僕しかいないし、何年と続けることも立派なことだけど、僕は今が大切だと。今、ゼロワンを支えて頑張っている人間こそ、僕は誇るべき」ときっぱり。

 一方で「今まで頑張ってきてくれた選手にも感謝の気持ちは忘れず。ゼロワンを離れていった人が『俺、ゼロワンにいたんだよ』と、胸を張れるような団体にしなきゃいけないと思うんで」とも付け加え、〝ゼロワン愛〟を語っていた。

 そんな大谷はこの日、リング上で同王座に挑戦することを表明。昨年9月に「左前腕両骨骨折」を負い、長期欠場しているタイミングだったが、次のように意気込んでいる。

「ケガした状態でダメでしたという姿を見せるよりは、そこから立ち上がりましたよと。そういうところを見せて、なおかつ結果を出せば絶対元気を与えられる。そういうプロレスラー像を見せる使命があると思う」

 無理をすれば選手生命を縮めるリスクもある。それでも「心配する人もいると思うけど『僕がやる、やれる』と言うのを信じていただきたい」と、大一番に臨む決意は揺るがなかったようだ。

 そして、取材終盤には今後の〝夢〟を打ち明けてくれた。

 大谷は「答えとしては面白くないかもしれない」とした上で「僕はやっぱりゼロワンで頑張っている選手を幸せにしたい。ゼロワンがどういう状況でも応援してくれるファンもいっぱいいる。そういう人たちに『ゼロワンを応援してよかったな』と。あるいは選手にも『ゼロワンを続けて良かったな』と思ってもらえるようにしたい」。照れくさそうに話す姿が印象的だった。

 頚髄損傷と診断された大谷は家族と会話できるようになったという。プロレスに情熱を注ぎ、多くのファンから愛される〝炎の戦士〟の1日も早い回復を願っている。

(五輪、格闘技担当・小松 勝)