メモリアルデーを迎えたプロレス界の盟主が向かうべきは――。新日本プロレスの創立50周年記念となる「旗揚げ記念日大会」(1日、東京・日本武道館)には、団体の歴史を彩ったOBたちが大集結。メインのリングで健在ぶりを披露した旗揚げメンバーの〝炎の飛龍〟藤波辰爾(68)、セレモニーに参加した〝革命戦士〟長州力(70)、〝格闘王〟前田日明氏(63)のレジェンドが取材に応じ、古巣マットに対して思い思いの「激言」を放った。


 1972年3月6日の旗揚げから50年の節目を迎えた記念大会は、団体創始者・アントニオ猪木氏の来場こそかなわなかったものの、豪華メンバーが花を添えた。

 メインのリングで大暴れした藤波は「常にプロレスはファンとともに来ている。50周年の歴史をひもといたら、いろんなヒントがいっぱいあるはず。一時期は極端に過去を消し去る時期があったじゃない。あれなんか、もったいないよ」と新日本に助言を送る。

 さらにメモリアルイヤーを機に、今後は多くのOBが参戦することを熱望する。「僕は生涯現役で来てるけど、こうなったら1回引退したみんなも。早くしないとレジェンドは賞味期限が短いからね」と、長州や前田氏に一夜限りの現役復帰を呼びかけた。

 現在のプロレス界は長引くコロナ禍に苦しむ。藤波も1980年代に選手の大量離脱を経験し、社長としては2000年代に「暗黒時代」と呼ばれた危機に直面した。だからこそ「大変だったことはいっぱいあるんだけど、そういうことがあるたびに新日本は強くなるんですよね。不思議な団体なんだよ、本当に」と、試練を乗り越えた上でのさらなる発展を願う。

 放送席でゲスト解説を務めた長州は「頑張ってるのはわかるよ。あまり聞かないでくれ。時代、時代が違うんだから」と引退した身として多くは語らなかった。ただし、闘病生活を送る猪木氏の来場を願う声が高まっていることについては「今日集まった選手の中でも、アントニオ猪木という存在があれば全く雰囲気も違うだろうし。また猪木さんと『1、2、3、ダーッ!』を? そうだね。声が出なくても、みんなで会長に合わせてやるとファンは喜ぶんじゃないかと思う」と話し、師匠の〝燃える闘魂〟と新日マットでの再会を熱望した。

 あえて厳しい声を上げたのは前田氏だ。現在のスタイルで再興したことを認めつつも「じゃあ、3年後、5年後、10年後、今のままでいいんですかってことだよね。プロレスの定義って、壊れ続けなきゃいけないんだよ」と、常に新たなムーブメントを起こすことの重要性を指摘する。

「猪木さんが(モハメド)アリ戦をやった団体なんだよって、イメージがないんだよね。格闘技から離れすぎてもダメだと思うんだよ。そこを完全に忘れちゃって『あの時代は新日本しかなかっただけで、俺らには関係ないよ』としていると、いつか自分たちで掘った落とし穴にはまるよね。WWEだって(ブロック)レスナーが(米総合格闘技イベント)UFCに挑戦したいって言ったら許可したじゃないですか。日本(の団体)はそういうのなくなっちゃったでしょ?」

 団体の歴史を重んじるのであれば、時には原点回帰も必要と力説した。ちなみに藤波が提唱した一夜限りの復帰案には、長州、前田氏ともに「断固NO」だったが…。

 ともあれ、それぞれの〝新日愛〟が垣間見えた激言。偉大なるOBたちがつむいできた歴史とともに、セルリアンブルーのリングで戦いが継承され続ける。