【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】才能を開花させる眼力。選手の人生をも変えてしまう野球眼を持つ人物がいる。

 6月2日のDeNA戦で、NPB史上7人目の200セーブ(日米通算208)を史上最年長の38歳2か月で達成したオリックス・平野佳寿投手の偉業に触れ、そんなことを思い出した。

 2010年のことだった。オリックス新指揮官に就任した岡田彰布監督は、平野をセットアッパーとする配置転換を断行。それまで先発ローテだった右腕の適性をリリーフに見いだした。

「09年の成績が3勝12敗やろ。球種も少ないし先発やったらしんどいなと思てたんよな。俺が阪神の監督の時も交流戦で当たってるし、見てて思てたんよ」

「でも、実力的に見て3勝12敗の投手やない。馬力もあるしやなあ」

 この配置転換はハマった。10年は63試合で7勝32ホールド。11年は72試合で6勝43ホールドの成績を残し、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得するに至った。その後、平野は守護神となり14年には40セーブで最多セーブ。18年からはMLBのダイヤモンドバックスに移籍し、世界最高峰の舞台に立つまでに成長した。

 岡田氏にとってこの事象は05年、阪神監督時代の成功体験とリンクする。就任2年目の指揮官はそれまで守護神だったジェフ・ウィリアムスをセットアッパーに配転。7回に藤川球児、9回は久保田智之の「JFK」を確立した。

 特に藤川は才能を開花させ、日米通算245セーブを誇るリリーバーに成長。若手時代は先発だったところ、岡田氏が「真っすぐで空振り取れる。短いイニングやったらいけると思とった」と、特性を見抜いた結果だ。

 さらにさかのぼると、元横浜・佐々木主浩氏の例もある。当初は先発として期待されていた。だが、当時の小谷正勝投手コーチ(DeNAコーチングアドバイザー)が配転を判断した。

 取材をしても「先発で長いイニング投げたら腰痛が出るからなあ。でも短いイニングならいける。それやったらリリーフしかないやろ」と笑うが、とんでもない。三浦大輔(DeNA監督)、五十嵐亮太(元ヤクルトなど)ら幾多の投手を育てた手腕と眼力が、日米通算381セーブの大魔神を生み出した。小谷氏の眼力は77歳の現在でも指導者であることが証明済み。岡田氏についても阪神の次期監督候補に名が挙がるなど、野球偏差値の高さには定評がある。

 今後、眼力ある指導者にどんな才能が見いだされるのか。楽しみに待ちたい。

 ☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。