菊池雄星、大谷翔平、佐々木朗希。なぜ近年、岩手から球界を代表するスーパースターが続々と出てくるのだろうか。

 元楽天のスカウト・早川実氏は東北にプロ野球球団が誕生したことで、東北の野球熱が高まった影響があるのではないかと考える。

 2005年、当時プロ野球空白地帯だった東北に東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生。楽天は本拠地を宮城県仙台市の宮城球場=現楽天生命パークに置いたが、チーム名には12球団で唯一の地方名「東北」を入れた。球団が発足した05年は最下位。その後も成績は低迷したが、13年には日本一を達成した。

 早川氏によると、特に11年の東日本大震災から13年に楽天が日本一になる流れが東北の野球熱を高めたという。「(当時の)星野監督は『一つの目標に向かって、野球を通して、被災地が立ち直らなければならない』という願いの元で戦っていた。(星野監督就任の)3年目に優勝した時、勝つことで、復興と楽天の優勝への道が一体になって(野球に対する熱が)東北全体に広がった」と振り返る。

 実際に震災発生時のプロ野球選手会会長・嶋基宏(当時楽天に所属、現ヤクルト)の「見せましょう野球の底力を」という言葉は、流行語大賞にノミネートされるなど注目を集め、野球ファンだけでなく、東北を中心に多くの被災者を励ました。

 また震災を機に一気に東北の野球熱が高まった背景には、もともと楽天が東北に根付くため精力的に活動していたことがある。楽天は一軍でも年に一度は本拠地以外の東北各県で主催試合を開催。今年度のチケットはすでに完売している。

 東北では野球熱の高まりによって「巨人しかテレビで映らなかったのが楽天の方が割合が多くなった」など、楽天の選手を目にする機会が格段に増えた。駅には楽天の包装紙のお土産が並び、子供から何からユニホームを着ている様子は「おらほのヒーローだっていうのをみんなが認めているような感じ」だという。

 当然この野球熱は子供たちへの影響も大きい。「毎週楽天の試合があって、そこで育ったことで楽天に入りたい。親戚の人に見てもらいたい」と思う子供が出てくるのは自然だ。実際に球団創設直後ではあるが菊池雄星も中学時代は、目標の一つに「楽天のエース」をあげていた。

 楽天は、今週から交流戦を迎え、普段はなかなか見られないセ・リーグの球団との試合が東北で行われる。現在、楽天はパ・リーグ首位。この勢いで交流戦を制し、前回の優勝同様に東北の野球を盛り上げれば…。新たなスターが東北から出る後押しとなるのか。また今後は岩手だけでなく東北6県からスター候補が出てくるかもしれない。