緊急事態発生だ。巨人・坂本勇人内野手(33)が「左腹斜筋筋損傷」のため23日から故障班入りし、25日の開幕戦出場は絶望となった。2年ぶりのV奪回を目指すチームにとっては、あまりにも痛いアクシデント。この非常時に試されるのが、球団が総力を挙げて取り組んできた若手の底上げ、そして坂本本人の〝世代交代〟への思い。救世主は現れるのか。

 23日に東京ドームで行われた全体練習に背番号6の姿はなかった。この日からジャイアンツ球場での故障班に合流。21日の練習中に異変を訴え「左腹斜筋筋損傷」と診断された。開幕直前での痛すぎる離脱…。原辰徳監督(63)は「コンディションが『不良』ならば『良』にする。すべて受け止めて、前へ進ませないとね。逆風だってヨットは前に行くんだからな」と気丈に振る舞った。

 坂本は2018年7月にも左脇腹の肉離れで離脱。今回のケガの程度や細かい箇所は不明ながら、4年前は復帰までに1か月以上を要しており、しばらくは坂本不在での戦いを余儀なくされそうだ。

 チームとしては早期復帰を願うばかりだが、こうした有事で問われるのがバックアップメンバーの充実ぶりだ。特に今季は球団と現場は「若手の底上げ」を一大スローガンに掲げ、実績のない遊撃手にキャンプから多くのチャンスを与えてきた。

 ただ、2年目の中山はオープン戦に入ってから失速。一軍にしがみつけず、今月中旬から二軍落ちとなった。開幕戦の代役は昨季、中日・大野雄から2本塁打をマークした広岡が有力候補に挙がる。ほかにも、高卒5年目の湯浅や若林らでカバーしていくことになりそうだ。

 若手の台頭は、坂本自身の願いでもあった。8年連続で主将を務める決断を下した昨オフ、こんな言葉を口にしていた。

「実際、コイツやったら大丈夫かなという選手もまだいない。あと(主将を)やっても1年ぐらいやと思う」

 あえて自ら〝リミット〟を口にしたのはなぜだったのか。チームスタッフは「岡本和は別として、自分を押しのけるぐらいの成績と責任感を持った若手が出てこいということでしょう」と坂本の思いを代弁していた。

 遊撃の激務をこなしながらレギュラーを張り続け、昨季までの15年間で通算2118安打。不世出の選手とはいえ、坂本も今年12月で34歳を迎える。坂本が高い壁であり続ける一方で、いつまでも後釜候補すら現れない状況はチームや本人にとっても望ましくはない。

 逆境をハネのけ、一気にブレークするのは誰か――。