【広瀬真徳 球界こぼれ話】米大リーグ機構(MLB)が今月2日からロックアウトに突入。FA選手の契約やトレード、球団施設の使用などがすべて停止されている。機構側と選手会が課徴金制度(ぜいたく税)の上限額などをめぐり衝突しているようだが、両者の溝は埋まらぬまま。半月がたとうとする現時点でも解決の糸口が見えていない。

 日本とは違い米国は厳格な契約社会で「あいまいな回答」を良しとしないお国柄である。日本であればこういった紛争に陥ると「ケンカはやめて話し合おう」と体裁を考慮。打開に向け両者が歩み寄るものだが、米国は安易な妥協はしない。それどころか徹底抗戦にもつれることが多いため、結果的に時間を要することになる。現在はまさにこの状況だろう。このままではポスティングでのメジャー移籍を視野に入れる広島・鈴木誠也の交渉や、来季公式戦開幕にも影響を及ぼしかねない。何とか早期解決を、と願うばかりだがここにきて日本球界にも波紋が広がりつつある。

 例年12月のこの時期には来季日本でプレーする外国人選手が出揃うもの。だが、今年はロックアウトにより各球団の獲得交渉も難航を極めているという。あるチームの編成担当に現状を聞くと「来日希望が強い有望選手でも代理人が『とりあえずメジャー球団の条件を聞くまで待ってほしい』と言ってきますから。そうなるとこちらは限られた時間の都合上、一旦撤退するしかない。このままだと来季の外国人はメジャー球団と契約できそうにない選手か独立リーグ所属などのマイナー級選手だけになりそうです」と嘆いていた。

 今年日本シリーズを制したヤクルトのように外国人選手の活躍はチームの浮沈に直結する。特に今季下位に低迷したチームには優良助っ人の獲得有無は死活問題。担当者が頭を抱えるのも当然だろう。

 くしくもロックアウトに合わせるかのように世界規模で新型コロナウイルスのオミクロン株が蔓延。日本は水際対策として先月30日から全外国人の入国を原則禁止にした。すでに日本在留のビザを取得している外国人選手は今後再入国が認められるだろうが、新たに来日する助っ人やその家族に関してのビザ発給、日本入国は依然不確定だ。これが深刻化すれば事態はさらに混迷を極める。

 決して「対岸の火事」ではない米メジャーの混乱。どんな形で決着を迎えるのか。日本の球団関係者は今も不安な様子でその推移を見守っている。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。