【ヤクルト日本一手記】MVP中村悠平 苦しかったSNSの声…「いつか見てろ」の反骨心が原動力でした

2021年11月28日 09時00分

試合終了の瞬間、ヤクルト・中村の感情が爆発した(東スポWeb)
試合終了の瞬間、ヤクルト・中村の感情が爆発した(東スポWeb)

 ヤクルトがオリックスとの日本シリーズ第6戦(27日、ほっともっと神戸)を延長12回の激戦の末に2―1で制し、対戦成績4勝2敗で6度目の日本一に輝いた。シーズン、クライマックスシリーズに続いて好守でチームをけん引し、シリーズMVPに輝いた中村悠平捕手(31)が手記を寄せた。

 再び高津監督を胴上げできて、今は喜びの気持ちでいっぱいですが、日本シリーズが始まる前は勝てるのかな…という不安しかなかったです。昨年まで8年連続でパ・リーグのチームが勝っていたことも意識にありました。

 特に不安だったのは初戦です。試合にどういった入りができるのか、相手先発も山本由伸くんですし、打線には吉田正尚くんと杉本裕太郎選手という中核がいて、そのままズルズルいってしまったら一気に4連敗しちゃうんじゃないかとか考えてしまったりして。

 でも初戦の戦い方を見て〝ちょっと頑張れば〟と少しだけ思いました。それは自分が山本くんから適時打を放ったこと、サヨナラ負けにしましたけど8回まである程度抑えられたことで、少し自信がついたというか。

 キーポイントだと思ったのは2戦目です。アウェーで、向こうは前夜にサヨナラ勝ちしている最高の流れ。シーズン中ではそういった流れを止めるのは難しいんです。そこで高橋奎二の力もあって完投できて、一つ大きな流れを止められた。そこで向こうの流れを一気にこっちの流れに持ってこれたことが一番大きかったんじゃないかなと思います。

 シリーズ前はひたすら相手の打者、投手の映像を見ていました。僕はすごく不安症で、頭をいっぱいにしちゃいたかったんです。福田選手に安打されて宗につながれて、3、4番には本塁打されて、山本くんと宮城くんには完封されてとか。そういうことで頭をいっぱいにしました。そうしたら試合が始まれば、あとはいいものを拾い集める感じでいけるんです。

 試合開始は頭の中は〝最悪〟なんです。でもそこで一死取った、1ストライクを取った、1イニングゼロで切り抜けたとなり、自分の気持ちの余裕が出てきたりするんです。それは通常のシーズンの中ではなかなかできないことなんですけど…。

 日本シリーズの大きな舞台の中でやってみようと思い、それがいい方向に行きました。シーズン中も映像は見ますけど、そこまで何試合も何試合も振り返ったりはあまりしないです。でもオリックスとはなかなか対戦しないですし。対戦した交流戦と今の時の状態も全然違うし。

 オリックスの試合はたくさん見ましたけど、でも結局答え出ないんですよ。頭の中では自分なりのイメージはありますが、あとはその日の試合で自分が感じたことでリードしていくしかないと思うので。

 初戦の奥川、第2戦の高橋には「何を投げるにしても攻めてきなさい」と言いました。変化球投げたら逃げている、インコースにいったら強気でいってるとか思われがちですけど、そうではなく「変化球でも外真っすぐでも攻めるんだよ」って。

 奥川に感心したのはシリーズの舞台で自分の投球ができたこと。高橋奎二も初戦に負けて2戦目も負けるとやばい状況の中で自分の投球ができるわけですから、すごいことです。僕は若い投手に乗せられてリードできた感じはありました。

 打者として自分は初戦に山本投手から2本打てましたけど、これはほんとに開き直りです。抑えられて当然の投手なのでボールが見えたら振ろうと。当たってくれたら前飛んでくれたらいいかなという感じでした。

 ただ、不思議だなと思うんですけど意外と冷静でもありました。自分の前に2番の山田が四球で出てますけど、山本投手の球が抜け出し始めてました。だから「右打者だったら外じゃなくて、抜け出しているからインコース目に目付けしよう」と思ったんです。

 打ったのはどちらかと言うと真っすぐ内寄りなんですけど少し内めに目を付けたら、たまたま抜けてきて、そこで自分が一発で仕留められて。その1本からすごく自分が楽になりましたよね。

 今回は2015年の日本シリーズとは心理状態が全然違いました。前回は地に足付かない状況でしたが、今はどっしりと落ち着けて1試合1試合戦えていたと思います。

 その15年から6年間はつらくて苦しい思い出しかなくて…。シーズン96敗した17年もそうですけど、16年もチームは5位ですし、個人的な成績も全然でした。僕はSNSをやっていますけど「中村じゃ無理だ」「違うやつ使ったほうがいいよ」とか。いろんなことを見てきたし、言われ続けてきたところもあった。でも逆にそれがなかったら今の自分もなかった、ここに来てる自分もなかったと思います。

「いつか見てろ」じゃないですけど、そんな反骨心を芽生えさせてくれたのは、ものすごく大きな理由の一つだと思います。ほぼほぼ、それが原動力みたいなもんですね。めげずにやれたのも日本一になれたのも、それが大きな理由だと思います。

(ヤクルトスワローズ捕手)

 

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