DeNA・藤浪晋太郎投手(32)が22日の阪神戦(甲子園)に先発登板。2022年に阪神を退団した藤浪にとって、この日は日本球界復帰後初となる古巣相手との対戦となった。

 12年のドラフト会議で4球団競合のすえ入団→高卒入団から3年連続で2桁勝利→しかしその後は宿病の制球難に悩み続け、最後まで完全復活はならぬまま米球界へ挑戦――。という経緯を持つ右腕は虎党にとって、甘い思い出も苦い思い出もたっぷり詰まった「忘れたくとも忘れられない元恋人」のような存在。聖地・甲子園のスタンドには今も消化しきれない複雑な愛憎が、何度も巨大な感情の渦を巻き起こした。

 近本、森下、佐藤輝、大山らの好打者を擁する阪神は今季、対戦球団バッテリーからの執拗な内角攻めと、それに伴う死球禍で負傷者が続出。右打者への抜け球などで死球を多く出してきた藤浪の登板は、プレーボール前から虎党たちをセンシティブにさせていた。初回に森下へ内角スレスレのボールを投じてしまっただけで「どーしたんや藤浪!」などの容赦ない罵声の嵐が飛ぶ。ピンチの場面を抑えれば抑えたで「なんや! きょうは調子ええんか?」と揶揄するような大声も響いた。

 結局5回を投げきることができず、5安打5奪三振5四死球で藤浪は降板。それでも失点は最小限の「1」に抑えた謎多き95球は、まさに怪投とでも呼ぶべきものだった。マウンドに歩を進めた相川監督によって交代を告げられると、背番号27は静かに三塁側ベンチへ下がろうとする。その時、球場の9割以上を占めたウル虎イエローの客席からは大きな拍手が巻き起こった。

 四死球を5つも出し、何度も得点圏に走者を背負い、抜け球で罵声を浴びながら球数ばかりを費やしたその姿は、決してカッコいいものではなかった。喝采はこの日の投球内容への賛辞ではない。不器用なりに最後までもがき続けた元虎右腕への敬意とエール。そしてどこかでくすぶる恋の残り火だった。