リーグ3位から逆転日本一のキーマンはやはり主将・坂本勇人内野手(32)だ。来季は巨人生え抜き最年長となるキャプテンの存在感は絶大。春季キャンプ中に見せた〝鬼の一面〟と、巨人でヘッドコーチを務めた本紙専属評論家・伊原春樹氏の分析により、CS突破における坂本の役割がクローズアップされている。

 決戦の時は刻一刻と迫っている。11月6日から2位・阪神とのCSファーストステージを戦い、勝ち上がれば10日から間髪入れずに王者・ヤクルトとのCSファイナルステージが待ち受ける。

 原辰徳監督(63)は本拠地最終戦となった23日のヤクルト戦(東京ドーム)後、ファンに「チャンスがある限り、ジャイアンツは一つになって、ワンチームになって戦い抜きます」と高らかに宣言したが、チームとしては悲願としていたリーグV3の夢が消滅。目標を達成できなかった実際のチーム事情はどうなのか。

 ヘッドコーチの経験から伊原氏は「やっぱり巨人の場合は優勝を目指してやってきている。優勝しかないわけですよ。それが3位という結果に終わったわけですから、間違いなくモチベーションは下がっていると思いますよ」と分析する。

 ただ、2010年のロッテのように3位から日本一をつかむチャンスはある。しかし、伊原氏は「ロッテとは立場が違いますから。あの時のロッテは3位になっただけでも喜ばしいことで、そこでチームにも勢いがついた。『同じように巨人も…』とはいかないですよ」と、一筋縄ではいかないと見ている。

 そんな煮え切らない現状を打破できる存在こそ、キャプテン・坂本だろう。16日の広島戦(東京ドーム)で右手首に死球を受けたことにより負傷。大事を取って24日のシーズン最終戦も欠場したが、28日にジャイアンツ球場で行われた全体練習では守備練習も再開するなど、順調な調整ぶりを見せていた。

 そんな坂本だが、今春に行われた沖縄キャンプではチームをまとめるべく、後輩にカツを入れる〝鬼の一面〟が見られた。室内練習場での個別練習中の出来事。真横で打っていた丸が、毎回掛け声が裏返ってしまうスタッフが気になり、たびたび苦笑。練習に集中できていない様子に坂本は「やる気入ってるのかっ!」と一喝した。丸はすぐさま「すいません!」と謝罪すると、そこからは黙々とスイング。坂本も自らの練習を消化しながら横目で見守ると、最後には「気合入ってるな!」と最高の笑顔でほめた。アメとムチを使い百戦錬磨のFA戦士を操縦した。

 坂本のキャプテンシーは伊原氏も高く評価する。「自分がヘッドコーチを務めていたころに比べて、キャプテンを7年間務めたことで立派な青年になった。後半戦は徐々に成績を落とした部分はあるかもしれないが、いつもの勇人の後ろ姿を見せれば、難しい今のチーム状況にあっても後輩たちは絶対についてくる」。巨人にとって初となる3位から下克上の日本一は主将の背中にかかってくるかもしれない。