今年度のドラフト会議が11日に都内のホテルで行われた。思惑通りの指名ができてニンマリの球団もあれば、想定外の展開に地団駄を踏む球団も…。今年も元ロッテのスカウトで本紙評論家の得津高宏氏が、本紙恒例「ドラフト診断」でズバリ採点した。

 今年のドラフトを「不作の年」と言う人もいるようですが、こうした年ほどスカウトたちにとっては腕の見せどころ。誰もが知っている飛び抜けた目玉選手が少ないとなれば、情報収集能力の差がはっきりと出ます。

 結局、指名した選手がプロで活躍できるかどうかは5年後、10年後を見てみないとわからないわけですが、それでもドラフト会議の現時点で、評価、期待度の高い選手をより多く、バランス良く取ることができたかどうか。そこを見ていきたいと思っています。

 今年はまず、首をかしげざるを得なかった球団のほうから話させてもらいます。貧打に苦しんだというチーム事情があるとはいえ、中日の指名はどうなんでしょうか。

 1位、2位で野手を指名し、投手の指名は1人だけ。ドラフトではその世代のいい投手をどれだけ獲れるか、というのが各球団スカウトの目指すところですから「投手1人」というのは異質です。他球団にしてみれば競合する球団が減ったわけですから、大喜びといったところ。しかも、チームには根尾や石川昂、岡林ら、有望な若手選手がいないわけじゃない。日本ハムや楽天も上位は野手指名でしたが、下位でバタバタと投手を指名して帳尻を合わせています。このしわ寄せが近いうちにくるのではと心配になるほどです。

 私の古巣のロッテも、今年は「どうなのかな?」というのが正直な感想です。編成を担う松本本部長は市和歌山の出身で、1位は小園で行くと思っていましたが、同じ高校の後輩でも捕手の松川のほうでいくとは…。捕手難というチーム事情はわかりますし、OBだからこそ松川にプラス情報があったんでしょうけど、1位でなくてもよかったのではというのが正直な感想です。

 楽天1位の吉野も意外でした。線が細い印象があるんですが、これまで左打者ばかり指名していたので、右の外野手がほしかったんでしょうね。これもチーム事情としては分かるんですが「やられた!」という指名ではなく「そこに行ってくれて助かった」と感じた球団は多かったのでは。主力投手の高齢化も進んでいますし、上位で投手を指名してほしかったように思います。

 そこそこ良かった球団としては、外れ1位で評価の高い左投手を獲得できたヤクルト、将来楽しみな素材型の森木と、即戦力の左投手を2枚獲れた阪神、即戦力を6人も指名したオリックスあたり。ソフトバンクは1位の風間も含め、育成ドラフトで大量に指名した選手をどうやって育ててくるかが楽しみです。

 一方、文句なしのドラフトをした球団としては、今年はやはり西武でしょうね。くじで隅田を当てたというのはもちろんそうなんですが、2位の佐藤とあわせて、この世代でトップクラスの「左の即戦力投手」を2枚も獲得できた。独自路線の指名だけでなく、事前予告などで他球団の動向を見ながら「やられた!」と思わせる指名ができるのが、西武スカウト陣の強みだと思います。

 次いで「成功ドラフト」としたいのが巨人。7人指名したうちの6人が投手でした。この中から一軍で活躍する投手がどれだけ出てくるかわかりませんが、やはり投手は指名しないと出てきませんし「弾がなければ当たらない」わけです。育成で多くの選手を指名したのにも好感が持てます。

 1位で小園の競合に勝ったDeNA、1位で2連敗するも、上位で即戦力左腕2枚獲得できた広島、9位まで指名枠を使い「中の上クラス」の投手を果敢に指名した日本ハムも「成功」の部類に入れたいと思います。


【得津氏の評価】

 S=西武

 A=巨人

 B=DeNA、広島、日本ハム

 C=ヤクルト、阪神、オリックス、ソフトバンク

 D=楽天、ロッテ

 E=中日