阪神・大山悠輔内野手(26)が8日のヤクルト戦(神宮)で決勝の10号3ランをマーク。6―5の勝利に大きく貢献し、チームも9連戦最初のカードに勝ち越し、2位・巨人との直接対決を前に、ゲーム差も2・5に再び広げた。1か月近い長いスランプを乗り越え、復調気配を漂わせた背番号3だが、打棒復調の陰には「あの恩師」から愛情とともに送られた「ラッキーアイテム」の存在があった。

 普段は寡黙な背番号3の表情が、この時ばかりは喜びの色に満ちあふれた。梅野の適時打で同点に追いついた直後の8回二死二、三塁。この日4度目の打席に入った大山は清水の投じた3球目のストレートを一閃。神宮の杜の夜空を切り裂いた白球は右翼席へ着弾する決勝の10号3ラン。長い長いスランプに苦しみ、7番にまで打順を降格させられた虎の元4番が雨中の激闘にケリをつけた。

 大山は「(走者を)返すだけだと思っていたので、それがホームランになってすごくよかった。自分の世界にしっかり入れていたと思う」と充実感を漂わせた。これで今カード3試合合計で2本の本塁打を含む11打数5安打5打点。感覚は確実に戻りつつあるようだ。

 恩師から送られた〝ラッキーアイテム〟も復調の助けになったのかもしれない。送り主は大山の母校・白鷗大野球部で顧問も務める岡田晴恵教授だ。「実は少し前のことなんですが、白鷗大のすぐ側を流れる思川の河川敷で四葉のクローバーを見つけまして…。自著に挟んで大山の元へ送ったんです」と岡田教授は6日にゲスト出演したDAZNの特別企画番組「BASEBALL ZONE」で明かしている。

 その思いが届いたのだろうか。同日に行われたカード初戦でも〝孝行息子〟は9号ソロを含む3打数2安打2打点をマーク。岡田教授の胸を熱くさせた。

 ストイックな練習の虫である点は学生時代から変わらない。しかも「やんちゃ」な部員たちが多い野球部内においても文武両道で学業成績も優秀だった大山は、岡田教授にとっても特別な存在。「教員は常に、全ての教え子に対して平等であるべき」という自身の信念も時には揺るぎそうになる。

「大山は本当に後輩思いなんですよね。(同大野球部の後輩にあたる)オリックス・大下の面倒も本当によく見ているんです。大山からは『僕へ注いでくれる愛情を半分でも大下に分けてやってください』と言われてしまいました」と岡田教授は振り返る。

 人気球団の主砲を務めるプレッシャーはハンパない。しかし、大山はどんな時でも自分を見失わず、周囲への気遣いを忘れない。〝コロナの女王〟が改めてほれ直した男が再び猛虎打線を引っ張ってくれそうだ。