【藤井康雄「勇者の魂」(37)】僕は2011年からソフトバンクの一軍打撃コーチとして3度のリーグ優勝、日本一を経験。17年には二軍コーチとして育成方針の細かさ、組織力のすごさを見て学んできました。「優勝すること」を念頭に置いてスタートから日本シリーズまでのことを考えて動いてる。育成から支配下選手になって活躍する選手がいるということはスカウティングも見る目があるということだし、環境づくりが何から何まですごいよね。

 そして、17年の秋口にオリックスから復帰の話をもらい、僕の気持ちと一致しました。7年間、古巣を離れて学んだこと、あの緊張感をオリックスで味わいたい。勝つために福良淳一監督を支えたいと思いましたね。オリックスは14年に2位に入ったとはいえ、その後はBクラスが続いていたので簡単ではないことはわかっていました。

 8年ぶりのオリックスは…。ぬるい感じがしました。戦力的にも物足りなくて核になる存在がいない。レギュラーとしてバリバリの選手がいなくて、中途半端なポジショニングの選手が多くて…。もちろん、何とか能力を上げてあげたい、何とか戦力になれるようにと思って取り組みました。ホークスで学んだいい部分を持ち込めばよくなると思ったし、昔からよく知っているフロントの人たちの期待も感じていました。若いころに見ていたT―岡田をもう一度見てあげたいというのもね。

 相手投手に勝つためには何が必要か、集中するにはどうするか。一方で僕は自主性を大切にしていました。ホークスではコーチが準備を整えると、みんなが集まってやった。お膳立てをしていい雰囲気をつくってあげる。同じようにそれをやったつもりでしたよ。でも…なかなか競争意識が芽生えなかったですねえ。

 やらないからやらせることになり、どうしても「やらされてる練習」になってしまうんです。なぜホークスのような自主性が芽生えていかなかったのか…。昔はあったと思うんですよ。それが球団の合併などで、昔から引き継がれていた伝統が薄らいでしまったと思うんです。ベテランがいて中堅がいて、それを若手が見て勉強して入っていく。そういったものが合併で分断されて失われてしまったんじゃないですかね。

 T―岡田、安達了一のような生え抜きの存在が実績を残していれば…。ホークスで言えば、小久保、松中の時代から川崎、松田、本多らが彼らを見て成長し、そこに内川のようなFAで来た選手が溶け込む。若手が刺激されて1人、2人出てくるというような流れがある。中島宏之、小谷野栄一のベテランが入って来た時、チームを見てそう思っただろうか…。そこまではなかったと思います。岡田にしても安達にしても引っ張っていくタイプではないし、ケガや安達は体調的な問題もあった。ベテラン、バリバリの中堅、若手というバランスが取れていないんですよね。

 ☆ふじい・やすお 1962年7月7日、広島県福山市出身。泉州高(現近大泉州)から社会人・プリンスホテルを経て、86年のドラフト4位で阪急に入団。長距離砲としてブルーサンダー打線の一角を担った。オリックスでも95、96年の連覇に貢献。勝負強い打撃が持ち味で、通算満塁本塁打(14本)は歴代3位。代打満塁本塁打(4本)は日本記録。2002年に引退後はオリックス二軍打撃コーチ、11年からソフトバンクで一軍打撃コーチを務め、18年にオリックスに一軍打撃コーチとして復帰。今年から総合建設業「共栄組」に籍を置き、JSPORTSの解説、神戸中央リトルシニア、関西創価で指導している。