【赤坂英一 赤ペン!!】巨人を取材して33年になるが、これほど見るたびに悪くなる新外国人選手も珍しい。原監督が開幕から先発ローテに入れると明言したサンチェスだ。

 練習試合最後の登板だった13日の日本ハム戦は3回7安打6失点と散々。その前の6日のヤクルト戦も8安打4失点と打ち込まれ、5回二死満塁とされて降板。事実上のKOである。

 オープン戦までさかのぼっても、3試合で13安打11失点、防御率10・57という体たらくだ。サンチェスもさすがに自信をなくしているらしく、最近はひとりブルペンにこもって黙々とフォームのチェックをしていることもあるという。

 サンチェスの不振について宮本投手チーフコーチは「コロナ禍の影響で家族が来日できないこともあるのでは」と説明。コーチ陣もメンタル面でのケアをしていくと強調していた。

 しかし、昨季のサンチェスは韓国プロ野球・SKで17勝5敗、防御率2・62をマーク。推定年俸3億4000万円の2年契約と大リーガー並みの好条件で入団した。それほどの実力の持ち主が、家族がいないだけで本番前にこれほど不振を極めるとはどうも解せない。

 何か別の理由があるのではと思ったら、某セ球団の関係者が「韓国での成績など当てになりません」とこう言った。

「韓国はご存じのようにパワー野球で、データもクセもろくに調べず、早いカウントからガンガン打ちに行く。だから投手もそこそこのスピードとコントロールがあれば抑えられるわけです。その点、日本ではオープン戦からスコアラーに裸にされちゃうでしょう。それで、サンチェスも投げるたびに打たれてるんですよ」

 そこで思い出されるのが、2003年に韓国経由で巨人に入団したゲーリー・ラス(写真左)。巨人は前年02年に韓国・斗山で16勝した実績を評価していたが、日本では3勝4敗、防御率4・14と大きく期待を裏切り、1年限りで解雇された。ところが、翌04年は斗山に復帰して17勝を挙げ、なんと韓国で最多勝投手となる。それならばと今度は楽天が獲得したら、05年は3勝9敗、防御率6・33とまた散々な結果に終わった。

 サンチェスがラスの二の舞いとなるようなら、巨人の外国人戦略自体も見直しが必要だろう。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。