売り出し中の阪神・島本浩也投手(26)がレジェンドOBへの恩返しに燃えている。昨季の最下位から巻き返し、Aクラス入りを果たした矢野阪神。チーム再建の一番の原動力となったのは、防御率1点台の好投手がずらりと顔を揃える中継ぎ陣の奮闘だ。虎ブルペンの“裏番長”として同点、僅差ビハインドの場面を主戦場に今季63試合に登板。4勝1セーブ、防御率1・67をマークした左腕には思いを寄せる恩師がいる。OB・江夏豊氏(71)だ。

 きっかけは育成入団から支配下登録を勝ち取った直後の2015年の春季キャンプ。臨時コーチとして指導に当たった江夏氏から資質と練習姿勢を絶賛され、自身の使用していたグラブを手渡され激励された。

 しかし、一軍に定着することはできず、昨季の一軍登板はわずか1試合のみ。土俵際に追い込まれ「どうして自分は抑えることができないんだろう。来季ダメならもう最後だ」と自問自答を二軍のマウンドで続けていたと振り返る。今年の春季キャンプでも、視察に訪れた江夏氏の元に自ら歩み寄り、「自分はいい時と悪い時の差が激しくて」と悩みを吐露する一幕もあった。

 だが今季、開幕一軍切符をつかみとった島本は、ついにその才能が開花。「技術的に何かを変えたということはないんです。強くなったのはメンタルの部分。これまで塁上に走者を置いただけで『ああ、もうダメだ』と弱気になり傷口をどんどん広げてしまった。でも今年からは『打たれたところで次の打者さえ打ち取れればいい』と切り替えることができるようになった」と自己分析する。

「江夏さんにグラブを頂いてから4年。ここまで本当に長かったですが、いつか江夏さんに『あいつにグラブをやって良かった』と言ってもらえれば」と語っていた島本は今オフ、年俸850万円から3700万円と大幅昇給を勝ち取った。

 ただ江夏氏への報告は「まだまだですよ。(次に江夏氏に会った時には)『1年間の活躍だけじゃだめだ。何年も続けて活躍しなきゃ意味ないぞ』と言われると思います」。あの時受け取ったグラブは今も実家で大切に保存しているという。