セ・リーグ4連覇を目指す広島が、まさかの出遅れにあえいでいる。球団史上初となる開幕から5カード連続負け越しで、積み上がった借金は7。12球団最速で10敗を喫するなど、最下位に沈むチームは投壊、貧打、拙守でパニック状態だ。早々と「優勝確率0%」の屈辱データも突き付けられたが、浮上の目はあるのだろうか。巨人時代の7年前、同じ最大借金7の“V率0”から逆転優勝と日本一を成し遂げた経験のある長野久義外野手(34)に聞いた。

 試合を重ねるごとに負の歴史が掘り起こされる。広島は1979年に最大借金6から巻き返してリーグVと日本一に輝いたが、借金7以上からの逆転優勝はいまだかつてない。DeNAに1勝2敗で開幕から5カード連続の負け越しとなったが、これも球団史上ワースト。15試合を消化して総得点45、総失点80もリーグ最下位だ。

 DeNA3連戦を終えた緒方監督は「これが今のチームの現状。しっかりまた一試合、一試合戦っていくだけ。立て直していくだけ」と気丈に話したが、現状これといった打開策は見当たらない。16日からの鹿児島、熊本での巨人2連戦を前にチームにはどことなく悲壮感が漂っている。

 それでもカープには、かつて“V率0%”からの逆転Vを経験したベテランがいる。今季新加入した長野だ。2012年、巨人は開幕ダッシュに大失敗。2度の5連敗もあり、4月22日には球団の歴史で優勝した前例のない借金7となった。

 浮上のきっかけをつかんだのは、いみじくも鹿児島だ。同26日DeNA戦で開幕3番の長野を2年ぶりに1番に据えると、眠っていた打線が大噴火した。3安打2打点の長野を筆頭に先発全員安打で15得点を叩き出し、その勢いで交流戦、ペナントレース、CS、日本シリーズを制してオープン戦と合わせた“5冠”を達成した。

「覚えています。僕が久々の1番に入った鹿児島の試合でしたね」。長野も当時のことは鮮明に記憶していた。だからこそ、今の厳しいチーム状況にも下は向かない。「あの年もそうでしたけど、ちょっとしたきっかけでチームの流れは変わるもの」と話した。

 鹿児島に降り立った高ヘッドコーチは当時の巨人の話にニヤリとし「ウチもここできっかけをつかむ試合ができれば。そろそろ噴火してほしいね」とナインの奮起に期待した。カープが目指すはライバルが果たした奇跡の再現。桜島に赤ヘル軍団復活ののろしは上がるか。