阪神・近本が尊敬する赤星になるために…阪神だからこそ必要なモノ

2019年04月01日 16時30分

4回に二塁打を放つ近本

【楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録】 阪神のドラ1・近本光司は自身の目標とする赤星憲広氏のようになれるだろうか…。ルーキーだった2001年に新人王、盗塁王、ゴールデン・グラブ賞を獲得。虎の2度のリーグVに貢献したレッドスターの背中を追う旅路を、次世代のスピードスターが歩み始めた。

 近本は29日の開幕戦(対ヤクルト)で、赤星氏もなし得なかった開幕スタメンデビューを実現。その試合では適時三塁打を放ち、阪神の新人野手として63年ぶりとなる開幕戦での打点も記録した。翌30日は4タコに終わったものの、この日31日には二塁打で出塁し、大山の右犠飛で初得点。新人としては落ち着いたプレーぶりで、開幕3連戦を無難にこなした。

 ただ、先は長い。技術、体力、対応能力はもちろん、虎戦士ならではの困難も数多く存在する。初安打の際の観衆の大盛り上がりに「ブルッとしました」と話した近本だが、その逆は未体験のはず。調子を崩せば容赦ないヤジも予想される。しかし、それすらをはね返す心の強さを持たない限りレッドスターの境地には立てないだろう。

 現役時代の赤星氏の負けん気はすさまじいものだった。敗戦後に浴びせられたスタンドからのヤジに対し、ちゅうちょなく応酬。フェンスをよじ登らんばかりに詰め寄り「こっちは命がけで野球やってんだ!」とやり返してみせた。

 スポーツでは緻密さや冷静さ、技術の確かさなどはもちろん必要。ただ、ファンが入場料を払って観戦するプロスポーツでは、それ以上の何かが求められる。阪神のような人気球団となればなおさらだ。表現の仕方は人それぞれだが、虎党の心に響く熱い何かをグラウンドで披露する必要がある。「ぶち破れ! オレがヤル」のチームスローガンを地でいくプレーは、矢野監督も望むところだ。

 過去には1992年、「亀新フィーバー」という現象が巻き起こった。当時、低迷していた阪神は若手の亀山、新庄の活躍などもありヤクルトとデッドヒート。シーズン終盤までV争いを演じ虎党を熱狂させた。亀山のヘッドスライディングは代名詞にもなり、現在でも虎党の間で語り草となっている。開幕から1、2番に抜てきされた木浪、近本の新人コンビが終盤まで記憶に残る活躍をみせれば、当時と同様に前年最下位からのV争いも大いに期待できる。

 近本を陰から支えるスタッフも力が入る。同じ関学大の先輩であり、元捕手の清水サブマネジャーは「調子がいいときは放っておいていい。でも、長いシーズン必ず波がある。そういうときにいい方向にサポート、フォローしていきたい。もちろん選手全員に頑張ってほしいですが、関学OBとしては近本にレギュラーを取って頑張ってほしい」と胸中を語った。

 赤星氏と同様に大学、社会人を経てプロ入り。好青年で体格も近いだけにイメージは重なる。近本が赤星氏をしのぐ活躍を、虎党の記憶に刻むことを実現できれば…。05年以来のV奪回も決して夢ではない。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。