DeNAタイラー・オースティン内野手 17歳で精巣がんに…術後たった1週間で復帰

2020年05月02日 11時00分

今季からDeNAでプレーするオースティン

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=タイラー・オースティン内野手(DeNA)】「激しい痛みを感じたんだけど、あそこが痛いなんて母親には言えないでしょう? だから1週間くらい我慢したんだ。痛みは引いたように感じたんだけど、ある朝、耐え難いほどにまた痛くなって…」

 タイラー・オースティンは、それでも高校へ行き「きっとまた治まる、悪くなるはずがないさ」と夕方まで過ごしたそうだ。自分が17歳の多感な青年だったら…きっと同じことをしただろう。

 タイラーがかかっていたのは、精巣がん。

 睾丸の激痛が再発したその日、放課後に友人宅で痛みの原因を探ろうとインターネットで調べると「真っ先に出たのががんだった。これはもう母親に言うしかないって電話して、その日のうちに主治医に連絡すると、すぐに緊急外来に行きなさいと。そこで98%の確率で精巣がんですって言われ、翌日専門医のところで100%精巣がんですねって。翌週には手術で切り取って、転移もなかったおかげで、あれ以来問題はないよ」

 淡々淡々淡々…と人生最大の局面をあっさり気味に語るタイラーだが「不安は?」と質問した瞬間の表情が少し色を見せた。

「母親が泣き崩れた時にどうしようかと思った。怖いに決まってる。でも、自分の人生がこんなことで終わるわけないって、思い通した。間違っているかもしれないけど、ポジティブをキープして、希望を持って過ごすことはとても助けになると思う。分からない未来のことから頭を切り離し、とにかく前向きに過ごす。僕にとってはそれが助けになった」と、ブレない言葉に力強い人柄が見えた。

 彼自身の確信に満ちた落ち着きは、心配する家族、友人やガールフレンド(昨年結婚したステファニーさん)に安心を与えたそうだ。

「基本的には親しい友人にしか話してなかったんだけどね、同情されたくなくて。術後1週間くらいでどうしても外せない野球の試合がサンディエゴのペトコ・パークであって、テレビ中継の実況者がなぜか知っていてオンエアで話しちゃったんだ。試合が終わった後にケータイに友人から『大丈夫か?』ってメールがたくさん入っていたから何だ?と思っていたんだけど、家に帰ったら両親が教えてくれて。友人が録画したビデオを見たらバッチリ経緯を話されていたよ」

 苦笑したものの、振り返ってみれば、自分で明かすより誰かに伝えてもらって良かったかもしれないと話すタイラーの目は本心を語っているようだった。

 それより、術後そんな短期間で試合に出ていいものなのか。


「ああ!」。ここで初めてタイラーが噴き出した。「そりゃもう痛かったんだ。僕キャッチャーだしね。ちょうど下腹部に傷痕が残っているんだけど、ボールを受けるたびの激痛ったら。途中数イニングはサードに回ったんだけど、何回か体でボールを止めなきゃならない瞬間があって、みじめな痛さだったよ。打席は2四球とショートゴロだったからそこまでバットを振らなくて済んだけど、走ることよりも何よりもボールとの接触が本気でくてさ」

 さっきまで「もう11年も前のことだから」と話していたのがうそのように笑うタイラーから、よっぽど痛かったのだろうことが伝わってきて、一緒に爆笑した。

 しかし、激痛を抱えて1週間、がんだと発覚して1週間以内に手術して、術後1週間ほどの抜糸したてで、野球の試合に出るなんて17歳にしてよほどの精神力。

「これで人生終わらせてなるものかって、断固拒否モードだったからね。母には目の前では泣かないでと言ったけど、家族も友人も彼女もいてくれたし。この経験で、人生の一瞬一瞬を味わい、楽しむことを学んだ。野球への感謝、周囲への感謝、あらゆることに影響を及ぼしてくれた」

 タイラーは今季シーズンが再開されれば横浜をベースに野球をする。

「僕は、早期発見だったからこそ今がある。本当に本当にラッキー。ドクターいわく、17~25歳の男性で最も多いのがこの精巣がんだけど、その若さだから多くの人がすぐに気がつかない。何か違和感があったら迷わず病院へ行ってほしい。僕は、少しでも早期発見者が増えることを願って、いくらでも自分の話をしたいと思っているよ」

さ 日本へ行きたてでシーズン開幕延期、外出を控える生活は恐らく大変だろうが、長きにわたるパートナーであるステファニーさん(実はすごくセクシー!)とともに、日本であっという間に人気が出るのではないかと予想している。 

 ☆タイラー・オースティン 1991年9月6日生まれ。28歳。米国・ジョージア州出身。右投げ右打ちの内、外野手。2010年のMLBドラフト13巡目(全体415位)でヤンキースから指名され、プロ入り。16年にメジャーデビューを果たすと、レイズ戦で初打席初本塁打。この試合ではアーロン・ジャッジも初打席初本塁打を放っており、話題となった。18年シーズン中にツインズへ移籍、19年にジャイアンツ、ブルワーズと転々とし、20年シーズンからDeNAと契約。188センチ、100キロの体格で、メジャー通算33本塁打を誇るパワーヒッター。