プロ野球公式ファンクラブ(FC)――。その存在を知っていても、詳細をご存じの方は少ないだろう。「FCに入会するメリットはあるのか」「どの球団のFCが充実しているのか」。こんな気になる疑問を一気に解決する人物が出現した。「プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!」(集英社)の著者・長谷川晶一氏(44)だ。自費を投じて12球団すべての公式FCに10年連続で加入した長谷川氏がFCの知られざる“実態”を明かした。

 ――いきなりですが、まずマスク姿について説明してください

 長谷川:やっぱり気になりますか(笑い)。実は、このマスクもFCの特典グッズです。2006年の楽天の「ミスターカラスコクラブ」の特典でした。

 ――今、着ている赤と白の奇妙なユニホームも特典ですか

 長谷川:はい。これは09年の広島のアイテムですね。「ホームとビジターの融合」というテーマで本当にホーム用とビジター用のユニホームをくっつけてしまったようです。その結果、胸のロゴが「カオシマ」になってしまい、そんな球団ないだろ、とツッコんでしまいたくなりますね。
 ――FCの特典グッズといえばレプリカユニホームや帽子だと思っていた

 長谷川:確かにそういう“定番”もあります。でも、こういうアイデア満載の斬新なアイテムも多いです。楽天のカラスコクラブでは「ラジコンヘリ」だったこともありました。飛ばそうと思っても、うまく飛ばなかったですけど…(苦笑)。何でこういうものを作ったのかとも思うけど、次は何を出してくるんだろうと考えると楽しみになります。

 ――他に印象に残っているグッズは

 長谷川:巨人が12年に製作した人気玩具の「黒ひげ危機一発」ですね。飛び出す人形がオレンジのバンダナを巻いて、巨人のユニホームを着ています。翌13年は「ツミコレ」という巨人のユニホームを着て四つんばいになった人形を積み重ねて遊ぶゲームでした。

 ――巨人のイメージとは違いますね

 長谷川:巨人のFC特典はすごいですよ。12球団FC入会をスタートした05年に一番、驚いたのは巨人でした。とにかく特典が充実している。カネにものをいわせた戦力補強をする金満球団というイメージでしたが、FCでも金持ち球団ぶりを存分に発揮していました。僕はもともとヤクルトファンで巨人は憎い存在だったけど「完敗」した気分になりました。FCでも巨人は「球界の盟主」でした。

 ――12球団全部のFC会員になるきっかけは

 長谷川:ある疑問が湧いたんですよ。小学生の時からヤクルトのFCに入会していたんですけど、毎年、特典の内容に不満を持っていました。これで5000円の価値があるのか。他球団はどうなのか。そんな思いを抱いていた時に04年のオリックスと近鉄の合併に端を発した球界再編問題が起きた。この時、ファンサービスということもクローズアップされたけど、僕にはプロ野球のファンサービスが旧態依然のものという印象もあった。そこで各球団がどれだけファンを大切にしているかを知るためにはFCに入るのが一番。全球団に入ってみようと思い立ちました。

 ――実際に全球団に入会した感想は

 長谷川:最初、中日と広島に当時34歳の僕が入会できるFCがなかった。子供やシニアを対象にしたFCはあったんですけどね。母や親戚の子供の名義で入会しました。僕らの年代は対象外なのか…というさびしい気持ちになりましたね。今は両球団ともに入会できるようになっています。

 ――この10年間で最も変化があった球団は

 長谷川:DeNAですね。一時は迷走している感もありましたが、今年は充実しています。ただ、これは球団自体が親会社が変わったりして不安定でしたから、仕方がないのかもしれません。本業がうまくいっていなければFCも充実するわけがありません。そういう意味ではFCの充実度というのは、その球団の象徴かもしれません。今、はっきりとしたデータを集めようとしている最中なのですが、僕はFCの充実度がチームの強さにも比例すると思っています。

 ――プロ野球の見方も変わったのでは

 長谷川:変わりましたね。ずっとヤクルトファンでしたが、他のチームの特典の帽子やユニホームを身につけると親近感も湧いてきました。それに各球団の会報には選手の情報が満載です。この選手はこういう人なんだとか、こんな気持ちで野球をやっているということが分かると注目してしまいます。特典の入場券も届きますから、神宮球場でヤクルト戦をやっていても千葉のロッテの試合に行ってしまったり…。今でもヤクルトファンなので、後ろめたい気持ちもありますね。

 ――ファン以外の球団のFCに入るメリットはある

 長谷川:ありますよ。実際にヤクルトのFCには東京在住の阪神や広島のファンの方も入会しています。優待チケットや優先販売を利用して神宮球場で阪神や広島を応援しています。

 ――著書の反響も大きい

 長谷川:おかげさまで…。今までも何冊か本を書かせていただきましたけど、この本が最も反応が早かったですね。FCに対する関心が高いことがあらためて分かりました。巨人、ロッテ、DeNA、ヤクルトの4球団の担当者の方からも連絡がありました。本の中で先ほど話した巨人の「黒ひげ危機一発」は良かったけど「ツミコレ」はちょっと…と書いたんですが、巨人の担当者の方からは「ツミコレはダメでしたか…。来年は期待していてください」と言われました。来年の巨人が今から楽しみです。

 ――今後も全球団入会は継続する

 長谷川:もちろんです。10年後にもう一度、本を出したいですね。今、「12球団ファンクラブ評論家」という肩書の商標登録を出願中です。何のメリットがあると言われると困るのですが…(笑い)。あとは僕以外にも全球団のFCに入会している方がいるんじゃないかと思います。今回は東スポさんを通じて呼びかけさせていただきます。ぜひFCについて、いろいろとお話をしましょう!

☆はせがわ・しょういち=1970年5月13日生まれ。早大卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに転身。主な著書に「夏を赦す」(廣済堂出版)、「マドンナジャパン 光のつかみ方 世界最強野球女子」(亜紀書房)、「最弱球団 高橋ユニオンズ青春記」(白夜書房)などがある。