【グレイシーハンターの〝真実〟 IQレスラー桜庭和志 実録 桜道(38)】2010年もいろいろありました。まずは5月29日の「DREAM.14」でハレック・グレイシー(ブラジル)戦です。アームロックを取れそうだったんですが、そのタイミングでハレックのズボンが脱げそうになるという、まさかのアクシデント。これで試合を止められて流れが切れてしまったりして、結果は判定負けでした。

 だけど、僕としては良い技ができてうれしかったんです。実は〝俺の勝ち〟って思っていました。〝必殺のローキック〟ができたからなんですよ。カーフキックとも違う場所をタイミングを見て狙うんですよ。この蹴りがヒットして、翌日スタッフにハレックの脚が大丈夫だったか尋ねたところ「松葉づえを突いて帰っていきました」と聞いて満足でした。

 次の9月25日「DREAM.16」でのジェイソン・メイヘム・ミラー(米国)戦は初めて試合で落ちました。第一印象で「デケえな」と思いましたけど、体が柔らかかった。流れで足を取りにいこうかと思ったら上に乗られて肩固め。「あ、やべえな、どうしよう」って考えている間に落ちちゃったんですよね。その後、意識を取り戻してセコンドに「あれ? 試合終わった?」って聞いたら、そいつが目をそらしながら「桜庭さん、落ちました」って(笑い)。でも一つ言わせてください。僕、ギブアップしてないですから!

ミラー(上)にマウントを取られた(10年9月)
ミラー(上)にマウントを取られた(10年9月)

 そして、この年一番の事件となったのが大みそかに戦ったマリウス・ザロムスキー(リトアニア)との対戦でした。この試合で右耳が取れちゃったんです…。最初、打撃の攻防になった後にザロムスキーが少し下がったから〝今だ〟と思ってタックルに入ったんです。そのタックルを切ろうとしたザロムスキーの腰骨辺りがちょうど僕の右耳に当たったんです。すると、レフェリーが僕の耳を見ながら慌てて「ストップ! ストップ!」って言ったんです。

桜庭は取れた耳に包帯を巻いて観客にあいさつ(10年12月)
桜庭は取れた耳に包帯を巻いて観客にあいさつ(10年12月)

 それで触ろうとしたら止められて…。タックルに入る前、ザロムスキーのパンチが僕の耳にかすって、ちょっと割れていたから「あー、取れたかー」と思ってマイクで「すいません、耳が取れちゃいました」って言ったんです(1ラウンド2分16秒TKO負け)。

 試合後、病院に直行。実はスパーリングでも耳がしょっちゅう割れて痛かったんです。それがあまりに頻繁だったから、先生に「耳はもういらないんで、このまま取っちゃってください」って。だけど先生に「桜庭さん、耳はあった方がいいですよ」って諭されて…。それでも「いつも痛いからいらないです」っていうやりとりを30分。その結果「まず1回付けて、軟骨を削りましょう」と。それで薄くなった右耳が今もこうしてくっついています(笑い)。

 

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