米テスラのイーロン・マスクCEOになりすまし、SNSでうそのメッセージを送り、熊本県上天草市の女性(65)から現金70万円をだまし取ったとして、上天草署は26日までに、詐欺の疑いで岡山県倉敷市の男(31)を逮捕した。

 逮捕容疑は昨年9月と12月、X(旧ツイッター)でマスク氏を名乗って「愛している。私の言うことを聞いてくれ」「今、50万円を送ってほしい」などと女性に虚偽のメッセージを送信し、現金合計70万円を指定した口座に振り込ませ、だまし取った疑い。

 一見すると「そんな話を信じる人がいるのか」と思われがちだが、ロマンス詐欺は恋愛感情を利用して正常な判断力を鈍らせるよう巧妙に設計されている。ロマンス詐欺師は、時には1年以上もかけて心理的な信頼を築いた後に切り出すため、被害者は違和感よりも「助けてあげたい」という気持ちが勝ってしまうとされている。

 これまでにもとんでもない手口が行われてきた。

 昨年、札幌市の80代の女性が〝宇宙飛行士〟を名乗る詐欺師とオンラインで知り合い、100万円をだまし取られる事件があった。〝宇宙飛行士〟は「今、宇宙船にいる。宇宙船が攻撃を受け、酸素が足りなくなった」として「酸素を買うためのお金を送ってほしい」とうそをついて送金させた。

 また昨年、フランスでは、50代の女性が〝ブラッド・ピット〟を名乗る詐欺師に1億円をだまし取られる事件があった。1年以上にわたるオンライン上の〝遠距離恋愛〟の後、〝ブラピ〟は病院のベッドで点滴中の写真(AI生成画像)を送り、「腎臓の治療のため100万ドル(約1億6000万円)が必要だが、元妻アンジェリーナ・ジョリーとの離婚裁判で資産が凍結され、治療費が払えない」として送金を求め、女性は85万ドル(約1億4000万円)払ってしまった。

詐欺師が使ったブラッド・ピット「手術」のAI生成画像
詐欺師が使ったブラッド・ピット「手術」のAI生成画像

 英国や米国では以前から〝トム・クルーズ〟〝キアヌ・リーブス〟によるロマンス詐欺が多数報告されている。典型例は「撮影で海外にいるが、スタント事故で病院にいる」「治ったら会いに行くから航空券代を貸して」という流れだ。

 詐欺事情通は「信じがたい設定ですが、逆にそのようなうそを信じる人だけが、送金する可能性が高いのです。つまり、荒唐無稽な設定は、疑い深い人を最初にふるい落とす選別フィルターとして機能しているという分析があります」と指摘している。