無登録で870億円を集め、金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で男女6人が逮捕された事件で、元フジテレビアナウンサーの長坂哲夫氏が被害を訴えるなど騒動が拡大している中、複数の出資者が悪質な手口の実態を訴えた。逮捕された近藤直恵容疑者(57)はお茶の間で人気を博した著名弁護士の妻で、亡き夫の信用を悪用していたというのだ。
警視庁が、2018年5月~23年月まで出資者14人に対し無登録で事業への出資を勧誘した疑いで逮捕したのは、コンサルティング会社「グローバルインベストメントラボ(GIL)」の実質的経営者だった大坂陽司容疑者(50)や山田武穂容疑者(65)ら男女6人。GIL社は年利12%をうたった海外金融商品「スターリングハウストラスト(SHT)」への出資を呼びかけ、14年以降、約7300人から計約870億円を集めたとみられる。ピラミッド型の組織で、6人は約1000人いるとされる勧誘員の指導や管理担当の幹部だった。
長坂氏も出資した一人で、X(旧ツイッター)に「【悲報】ある方に紹介され海外へ数千万投資してたんですが、その方きょう逮捕されたらしい。数千万円溶けました。トモハッピーの数倍、消えたな」と投稿した。警視庁によれば、1人で3億3000万円を出資した人もいた。
なぜ巨額のお金を出資してしまったのか。約5年前に3000万円を出資したAさんはこう話す。
「『SHTにお金を預けると毎月1%、年12%が返ってくる』と誘われた。最初はいくらか入ってきたが、2年ぐらい前から『イギリスの金融庁からマネーロンダリングの疑いをかけられたから返金がストップしていて、解除され次第振り込みます』となって、全く返ってこなくなった」
SHTへの出資金は英領バージン諸島の法人で管理され、元本保証を売りにしていた。
「『世界の金融は6人ぐらいで相場を操作しているというのが実態で、そこにお金を回して、運用させているから配当がすごい』『普通の人はできないが、日本に持ってきたのが大坂だ』などと説明されたが、私は中身について詳しく分からなかった。すべて近藤を信用したから出資したんです」とAさんは実態を疑うことはなかったという。
Aさんが近藤容疑者を信用したのは、弁護士だった夫の存在があったからだ。裁判官をへて、弁護士で活躍した近藤正昭氏で、法律をテーマにしたNHK番組「バラエティー生活笑百科」にコメンテーターとして長く出演した庶民派弁護士だったが、20年に他界していた。
近藤氏に弁護士業務を依頼していたAさんは「先生が亡くなった後、(妻の)近藤からSHTを誘われた。先生は人情派で、どの方にもよくしてくれて、私の命の恩人ともいえる方。その奥さんが『SHTは(夫の)近藤もやっていたんや』と言うから信用したんです」。
また、Bさんは近藤氏が顧問弁護士だった縁で、4年前に近藤容疑者から出資を持ち掛けられた。「近藤先生の奥さんだし、顔をつぶせないからと会った。『こんないい話はない。選ばれた人しかできない』とSHTに勧誘され、契約後は『全部、私に任せなさい』となった」
Aさんは出資額を積み上げていき、最終的には5000万円以上になり、妻も出資した。Bさんも含めて、3人ともに出資金や配当金は返ってこないままだ。
「SHTの配当が止まってからも近藤は別の年利25%の金融商品を勧めてきて、『鉄板やから500万円ちょうだい』と。近藤先生の奥さんで、信じていたから振り込んだが、そちらも今は止まったまま。他に出資した方も近藤先生のクライアントで、お金よりも信頼を売られたことに怒りがある」(Aさん)、「近藤先生の顔に泥を塗って、こんなことをするなんて…。お金はもう取り返すことはできないと思っている」(Bさん)
GIL社は24年6月に証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反行為(無登録営業)を申し立てられ、同10月に東京地裁から違反行為の禁止と停止が命じられ、解散していたが、近藤容疑者は似たスキームを用いて、出資者を募っていたとみられる。大坂容疑者は約65億円の報酬を得ていたとみられ、警視庁はGIL社の海外法人の実態や出資金がどのように運用されていたのかを調べている。













