フィリーズの反転攻勢が、米球界で「奇跡」と受け止められ始めている。開幕から歯車がかみ合わず、4月28日(日本時間29日)にはロブ・トムソン監督(62)が解任。ドン・マッティングリー監督代行(65)の就任時は9勝19敗と、名門の崩壊すら連想させる惨状だった。
それが21日(同22日)現在、25勝25敗の勝率5割まで戻した。直近10試合も7勝3敗と立て直しは数字にも表れ、地区首位ブレーブスとは9・5ゲーム差ながら、ワイルドカード圏までは3・5ゲーム差。急降下からの反転だけに、現地では驚きと警戒が混じる。まだ道のりは遠いが、ポストシーズンを語ること自体が非現実的ではなくなってきた。
そのV字回復の象徴が、アレック・ボーム内野手(29)だ。米メディア「ヤードバーカー」は21日(同22日)までに、序盤は批判の的だった強打者の復調をクローズアップした。3、4月のボームは打率1割5分1厘、出塁率2割1分8厘と沈黙。チーム低迷の戦犯のように扱われ、ファンの視線も厳しかった。
流れを変えたのは、マッティングリー監督代行の「リセット」だった。5月上旬のアスレチックス戦で数試合休ませ、練習漬けの状態から一度距離を置かせた。打撃コーチのケビン・ロング氏(59)も含め、首脳陣は技術論よりも心身の整理を優先した。その直後、ロッキーズ戦で7打数4安打。続くレッドソックス戦でも11打数4安打と勢いを持続し、パイレーツ、レッズとのカードでも快音は止まらなかった。
21日(同22日)現在、ボームは11試合連続安打中。5月は打率3割3分9厘、21安打、4本塁打と一変した。直近の本塁打は打球速度107マイル(約172キロ)を計測し、低空飛行だった打線に力感を取り戻させている。本人は「1か月の不振でシーズン全体が決まるわけではない」と冷静に受け止めるが、フィリーズにとってはそれ以上の意味を持つ。
監督交代だけでチームは変わらない。だが、酷評された主力がよみがえり、沈んだ空気を打ち破れば、順位表の見え方も変わる。開幕1か月で終戦ムードだったフィリーズは今、ボームの復活を合図に奇跡ではなく現実としての巻き返しを描き始めている。












