勝ち方を知る右腕は、苦しみながらも白星を手放さなかった。巨人の田中将大投手(37)が1日の阪神戦(甲子園)に先発し、5回1/3を8安打3失点。チームは5―3で勝利し、黒田博樹氏に並ぶ歴代2位の日米通算203勝目をマークした。

 立ち上がりから楽な投球ではなかった。初回は一死から3連打を浴び、いきなり満塁のピンチ。それでも後続を断ち、無失点で切り抜けた。2、3回に打線から5点の援護を受けたが、5点リードの3回には二死から安打と連続四球で再び満塁を招き、7番・坂本に2点適時打を許した。

 3点リードの6回も粘り切れなかった。先頭の小幡に左前打を浴びると、一死から熊谷に右前打、代打・中野に四球を与えてこの日3度目の満塁。ここで交代を告げられ、マウンドを降りた。

 試合後の田中将は「とにかく勝ってよかった」と安堵しながらも「自分自身は苦しい投球だった。特に今日は直球の制球が全然決まらなかった」と反省を口にした。それでも結果は勝利投手。これで今季は3勝0敗、5試合に登板して防御率2・35、クオリティースタート(QS)も3度記録している。

 復活の背景には、時間をかけた体の再構築がある。田中将は2023年10月に右ヒジ関節鏡視下クリーニング術を受けた。トミー・ジョン手術とは異なるものの、ヒジにメスを入れた投手が「投げられる状態」から「本来の出力と感覚を取り戻す状態」へ戻るには、実戦復帰後も相応の時間を要する。術後の違和感と向き合い、腰を据えてフォームを作り直してきた田中将が巨人2年目の今季に上昇曲線を描いていることにも一定の説得力がある。

 移籍1年目の昨季は、春季キャンプから久保康生巡回投手コーチ(68)と投球フォームの改造に着手。肩やヒジの位置を確認しながら、無理なく腕を振れる形を探ってきた。昨年10月に日米通算200勝へ到達した後も地道な作業を続け、今春キャンプではコンディションを一段引き上げた。

 球団関係者も「昨年とは肩やヒジの動きが違う。今は細かく直すというより、状態がいいことを確認する段階」と変化を認める。苦しみながら勝ち切る姿は、かつての剛腕そのものではないかもしれない。だが、今の田中将には経験と修正力で試合を壊さない強さがある。再起動した背番号11が、先発陣の支柱としてさらに白星を積み上げていく。