巨人・阿部慎之助監督(47)に付きまとってきた「鬼軍曹」のイメージは、この春の戦いぶりを追う限り、もはや一面的には語れなくなっている。厳しさを前面に押し出すのではなく、選手の挑戦や失敗を受け止めながら次につなげる空気をつくる――。今春の阿部巨人に色濃く漂ったのは、そんな〝仏のマネジメント〟だった。
巨人は22日で今季のオープン戦全日程を終え、10勝5敗1分けで日本ハムと並ぶ同率首位でフィニッシュした。だが、阿部監督は結果に浮かれることなく「みんなが素晴らしい準備をして、大きなケガ人もなくここまで来られた。準備は万端かなと思います」と総括。順位についても「全く気にしてない」と言い切り、春季キャンプから掲げてきた「結果より内容」の姿勢を最後まで崩さなかった。
今春のチームで印象的だったのは、阿部監督の〝失敗への向き合い方〟だ。11日のソフトバンク戦では投手陣が計11四死球と乱れ、「いいところを探すのがちょっと難しい」と苦笑いを浮かべた。それでも必要以上に語気を強めることはなく、野手の作戦ミスにも「それもいい収穫としてシーズンにつなげたい」「積極的なミスだった」と前向きに整理した。かつての〝鬼〟の印象を知る向きからすれば、穏やかな春だった。
もっとも、これは単なる優しさではない。今の巨人は変化の途中にある。岡本和真内野手(29=ブルージェイズ)が去り、新たな大砲候補として期待されるリチャード内野手(26)は骨折で一時離脱中。ボビー・ダルベック内野手(30)も長打力は魅力だが波がある。高卒2年目の石塚裕惺内野手(19)は開幕二軍が濃厚で、俊足の宇都宮葵星内野手(21)は支配下登録の見込み。そうした陣容を踏まえれば、今季の巨人が一発攻勢よりも、小技や走塁を絡めて1点を取りにいく野球へ重心を移そうとしているのは明らかだ。
その野球を成立させるには、選手が萎縮しないことが重要になる。細かなサインプレーも走塁も、思い切って踏み出さなければ始まらない。失敗を責め立てるより、修正しながら積み上げていく。その空気づくりこそ、今春の阿部監督が示した変化だった。
実際、ある選手は「メディアを通して持たれるような怖いイメージは全くありません。監督が重視しているのは『同じミスを繰り返さないこと』に尽きます。軸がはっきりしているのでやりやすい」と明かす。感情ではなく基準で示す指揮官像が、今の選手たちにはむしろフィットしている。
もっとも、ペナントレースが始まれば話は別だ。オープン戦のように内容を評価できる時期は終わり、勝敗がすべてを左右する。今春に漂った穏やかな空気が、長いシーズンでも失われずに機能するのか。今年の巨人を占う上で、その振れ幅こそが最大の見どころになる。












