東京ドームを切り裂いた一撃は、遠く離れたシカゴにまで大きな衝撃波を届けた。WBC1次ラウンドC組で現在、世界を驚かせているのはオーストラリアの快進撃だ。前日5日の台湾戦を完封で制した勢いそのままに6日のチェコ戦でもその力を見せつけ、5―1で逆転勝ち。2連勝を飾った。

 1点を追う3回、2死一、二塁の好機で打席に立ったのは、ホワイトソックスに所属するカーティス・ミード内野手(25)だ。カウント1―2からの7球目。相手右腕オンドラが投じた低めのチェンジアップを完璧に捉えると、打球は瞬く間に左中間スタンドへと突き刺さる逆転3ランとなった。打球速度106・8マイル(約171・8キロ)を記録した痛烈な一打は、ミードという〝未知の強打者〟が持つ「プロの打撃技術」を世界に知らしめるには十分過ぎるものだった。

 その一方でWBCにおけるミードの活躍は、所属するホワイトソックスのウィル・べナブル監督(43)にとって、うれしくも頭の痛い「難題」を突きつけることになったようだ。

 現在25歳のミードは、かつてタンパベイ・レイズの傘下で「トップ100プロスペクト」に名を連ねた逸材だ。昨年7月にエイドリアン・ハウザー投手(33)との複数トレードでレイズからホワイトソックスへ移籍。今春のオープン戦でも4試合で4安打、3打点、わずか2三振と、アリゾナの地ですでにその存在感を際立たせていた。

 ホワイトソックスの内野陣は今、かつてないほどの激戦区となっている。遊撃と二塁にはコルソン・モンゴメリー内野手(24)とチェース・マイドロス内野手(24)という若き才能が定着しつつあり、三塁には好調のミゲル・バルガス内野手(26)が控える。そこで浮上するのが今大会、侍ジャパンの一員として注目を浴びている村上宗隆内野手(26との共存問題だ。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」電子版の「ON SI」は、ミードの起用法について次のように興味深い予測を立てている。「もう一つの選択肢は村上がDHを務める際に、ミードを一塁で起用する可能性が高いだろう」。

 日本が誇る至宝・村上は、ホワイトソックスにおいて主軸としての期待がかかっている。しかし、ミードがこれほどまでに勝負強い打撃を見せ、内野のユーティリティーとしての価値を証明し続けるならば、べナブル監督はミードをラインアップから外すわけにはいかなくなる。

 もしミードが一塁に固定されることになれば、村上の守備機会は限定され、DHに専念せざるを得ない状況も考えられる。あるいは村上が三塁や一塁を守る際、ミードがそのバックアップや指名打者枠を争う「直接的なライバル」となる可能性も否定できない。

 WBCという最高の舞台で、オーストラリアの英雄として君臨し始めたミード。そのバットが火を噴くたびに、シカゴのベンチプランは書き換えを余儀なくされている。レギュラーシーズン開幕まで残りわずか。侍ジャパンの村上がシカゴに戻った時、そこにはかつてないほど激しい「定位置争い」が待ち構えているはずだ。

 ミードの躍進はホワイトソックスの未来を明るく照らすと同時に、べナブル監督の夜をさらに眠れないものにしている。