世界を覆う不穏な足音を、スタジアムの歓声が打ち消す日は来るか――。第6回WBCに臨む侍ジャパンは6日、東京ドームでの台湾戦で大会初戦を迎える。今大会で大谷翔平(31=ドジャース)がけん引するチームが狙うのは、単なる世界一連覇だけではない。緊迫する中東情勢の影響で決勝の地・米マイアミにもかつてない超厳戒態勢が敷かれることになるというが、そんな困難な時代だからこそ〝世界のOHTANI〟が放つ白球の輝きは「平和」への強いメッセージとなる。
暗雲を切り裂き、未来を照らす。侍・大谷のアーチとともに球場を揺らす歓声が、混迷する世界に希望の灯をともすことになりそうだ。台湾と相対する1次ラウンドC組初戦で東京ドームの打席に立つ、その姿は今や野球界のみならず平穏を願う世界中の人々の象徴だろう。
そして侍ジャパンが1次ラウンドを順当に突破すれば、次なる舞台は米国だ。14日(日本時間15日)にマイアミのローンデポ・パークで行われる準々決勝から一戦必勝方式で、大会2連覇へラストスパートをかけることになる。
しかし、そんなディフェンディングチャンピオンの〝戦いの航路〟の前方にはかつてない暗雲も垂れ込めている。米国・イスラエルによるイラン攻撃と、それに伴う報復の連鎖だ。現状でイランは米国本土を直接打撃できる長距離弾道ミサイルを実戦配備しておらず、ペルシャ湾に展開する空母エイブラハム・リンカーンのような圧倒的な米軍の軍事力に正面から対抗する手段を持たない。
こうした背景もあり、米連邦政府ともつながりを持つMLB関係者は「あってはならないことだが」と前置きしながらも、次のような「懸念」を口にしている。「正規軍同士の衝突で勝ち目がないと悟ったイランの革命防衛隊や、その支持を表明するヒズボラ、ハマス、イエメンのフーシ派といった親イラン勢力が選ぶ最大の危険性は警備の隙を突く『テロ行為』という非対称な手段。特に、世界が注目する今回のWBCのような国際イベントが『ソフトターゲット』として狙われる懸念は拭えない。中でもヒートアップする準々決勝ラウンドと決勝ラウンドは、最大限の警戒が必要だ」
この未曽有の危機を未然に防ぐべく、米政府と大会主催側のMLBIは今回のWBCで、スポーツイベントとしては異例中の異例となる「盾」を用意する方向で動いているという。米軍やFBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)が直接、会場周辺の警戒にあたる超厳戒態勢の導入だ。周辺は最新のドローン検知システムや特殊部隊によって守られる「聖域」と化す。これは単なる警備強化ではなく、テロの脅威に屈せずスポーツという平和の象徴を守り抜くという米国の強い意志の表れでもある。
そんな緊迫した空気を誰よりも理解しているのは、選手たちかもしれない。かつて大谷は「野球ができることは当たり前ではない」と語った。その言葉は、銃を構えた兵士がスタジアムを取り囲むかもしれない今、より切実な響きを持って胸に迫る。
前出の関係者も「MLBIを筆頭とした主催者側や警備を担うFBI、CIAの〝任務〟は、選手たちがただ白球を追うことだけに集中できる環境を死守すること。WBCで大谷のようなスーパースターが最高のパフォーマンスを見せることこそが、暴力に屈しない世界の姿勢を示すことになる」と言い切る。
大谷が放つアーチは国境や宗教、政治的な対立を超えて人々の心を一つにする力を持っている。戦火の影が忍び寄る今だからこそ、侍ジャパンの戦いは「世界一」という称号以上の価値を持つ。マイアミに歓喜の輪が広がる時、それはスポーツの勝利であると同時に平和の尊さが世界に響き渡る瞬間となるはずだ。












