フィリーズの看板、ブライス・ハーパー外野手(33)が改めて〝忠誠〟を口にした。だが、その言葉は美談では終わらない。昨年10月にデイブ・ドンブロウスキー球団社長(69)がハーパーについて「過去はそうだったが、今季はエリートではない」などと発言したことをきっかけに、両者の関係は「複雑化した」と報じられてきた。表向きは和解したととらえられているものの、それでもクラブハウスの空気は完全には晴れていない、というのが多くの米メディアの見立てだ。
インド系の米メディア「スポーツキーダ」も現在の両者の関係性をクローズアップ。ハーパーは「野球をするのは本当に楽しい。このスポーツが大好きだ」と語りつつ、矛先を〝誰か〟ではなく〝批評そのもの〟へ向けて、こう述べたという。「ここにいる誰に対しても、野球界の誰に対しても失礼なことは言ってない。でも結局『ハーパーはあの状況で何をしたんだ?』に帰着する」。
批判は避けられない。ならば受けて立つ――。その腹の据わりをにじませた。
同時に、ハーパーは契約の意味を再確認している。13年総額3億3000万ドル(約515億5000万円)。目先の一勝ではなく、球団が〝長く影響を与え続ける〟ことに自分のキャリアを重ねたいという。「引退した後で、それが終わってしまうのは望まない」。スターの口から出るには珍しいほど、時間軸が長い。
一方でハーパーは「息子に野球をさせたい? いや、たぶん無理だろう」とも言う。冗談めかしながらも名声の興奮と同じだけ、多大なストレスと批判を受けることを知っているからこその本音だ。「もし好きでやりたいなら、もちろんやらせる」。否定し切らないところも、逆にリアルだ。スターであることは栄誉であり、家族に背負わせたくない重荷でもある。
ドンブロウスキー球団社長のコメントやトレードのうわさに失望した過去も、ハーパーは「他人に左右されない」と言い切った。取材や報道についても「人々の仕事だから尊敬する」と受け流す。だが、ここで皮肉なのは、受け流すほどに〝温度差〟が浮かび上がる点だ。組織のトップの言葉は、勝敗以上に空気を変える。スターの沈黙もまた、勝敗以上に憶測を呼ぶ。
ハーパーは「この結婚が正しいものであってほしい」とも語っている。この「結婚」とは言うまでもなく契約の比喩であり、フィリーズという運命共同体への誓いでもある。問題は、その誓いが美しく聞こえるほど、現場の緊張を際立たせることだ。フィリーズは今季、結束で突き抜けるのか。それとも、忠誠の言葉が逆に亀裂の輪郭を濃くするのか――。鍵を握るのは打球ではなく、言葉の火種かもしれない。












