〝虎の大谷〟と呼ぶにふさわしい存在感だ。阪神・佐藤輝明内野手(26)が9日、沖縄・宜野座キャンプ第2クールを完走。前日8日の練習試合では豪快な打撃で観衆を沸かせ、他球団の主力まで打撃をのぞき込む「注目の的」となった。14日からは侍ジャパン宮崎合宿へ――。世界を見据えた準備が、静かに熱を帯びている。
プロ6年目のシーズンへ向け、佐藤輝の仕上がり具合は上々だ。この日は宜野座ドーム内でサインプレーやシートノック、個別打撃に集中。体感温度10度の冷え込みには「寒いで」と肩をすくめつつ、実戦を見据える段階へ入ったことをうかがわせた。チーム内の確認事項について「(サインプレーは)シークレット練習ね。もちろんしっかり確認しましたよ」と言い切り、タイガースの連覇に無論抜かりはない。
前日8日の日本ハムとの練習試合(名護)には「4番・三塁」で先発。2打席無安打に終わったが、打球はスタンドの空気を変えるほどの大飛球を放ち、詰めかけたファンのどよめきを呼んだ。さらに試合前のフリー打撃では、日本ハムナインが一塁側ベンチに集結。主砲のスイングを食い入るように見つめ、球場の視線が一気に一点へ収束する光景が生まれた。
8日の試合前練習の合間には万波、清宮幸ら日本ハムの強打者も佐藤輝のもとへ歩み寄り、笑顔で会話。中心選手同士の交流以上に呉越同舟になりながらも「打席で何が起きるのか」を確かめたくなる空気が漂っていた。
かつて、佐藤輝自身が逆に〝見る側〟だった時間がある。2023年の第5回WBC直前、侍ジャパンとの強化試合(京セラドーム)で対戦した際、打撃練習で特大アーチを連発する大谷翔平投手(31=ドジャース)の姿に思わず目を奪われた。その佐藤輝が、今は〝見られる側〟に回っている。広い甲子園を本拠地にしながら昨季は40本塁打、102打点を積み上げ、打撃2冠の実績まで手にした。
周囲が放っておかないのは当然だが、佐藤輝本人は必要以上に熱を上げない。「まあ去年打ってるんでね、いいことじゃないですか」とニヤリ。それでも続けて「あまりいろいろなことを意識しすぎずに、自分のやるべきことをやって。それで見てくれたらいいなと思いますね」と平常心を貫いた。
14日からは、3月開催のWBCへ向けた侍ジャパン宮崎合宿がスタートする。求められるのは「国内の主砲」としての数字だけではない。世界の舞台において、ひと振りで流れを変える存在感だ。かつて大谷を見上げた男が、今度は他者の視線を集める側として自身初となるWBCの大舞台に立つ。〝虎の大谷化〟が本物なら、その熱狂の中心は間もなく国境を越える。













