日本球界の未来は――。今オフもNPBから村上宗隆内野手(25)、岡本和真内野手(29)、今井達也投手(27)の3選手がMLB球団との大型契約を勝ち取った。またしてもスター選手たちが海外に流出した格好だが、3人はいずれも日本球界に貢献した功労者たち。しかし、アマチュア界では日本でプロ入りせずに米挑戦を目指すトレンドが加速傾向にあるという。NPBの〝空洞化〟を阻止できるのか。難題を抱える関係者の本音とは――。

 年末から年始にかけて日米球界が〝契約ラッシュ〟に沸いた。まずは村上がホワイトソックスと2年総額3400万ドル(約53億2000万円)で先陣を切り、今井はアストロズと3年総額5400万ドル(約84億5000万円)、岡本がブルージェイズと4年総額6000万ドル(約94億円)でそれぞれ新契約を結んだ。

 3人はヤクルト、西武、巨人の看板選手。MLB移籍は編成面にとどまらない痛手となるが、各球団ともこれまでの貢献や本人の意思を考慮し、ポスティングシステムの利用を容認した。そのため、今回の流出劇は想定されたものだったものの、日本球界の土台を支える「ドラフト」にも異変が起き始めている。

 現行の制度では、進路に日本のプロ野球を希望する選手が在籍する高校や大学などから「志望届」が提出され、NPBの各球団がドラフト会議での指名、獲得を検討する。しかし、これまで日本球界の〝財産〟となってきたはずの人材が、NPBを経ずに米国の大学への留学、編入するケースが頻発する事態となっている。

 記憶に新しいのは、花巻東高校(岩手)で通算140本塁打を放った佐々木麟太郎内野手(20)で、卒業後に超難関のスタンフォード大に進学。また、投げては最速153キロ、打っては高校通算45発の二刀流でプロ注目選手だった森井翔太郎投手兼内野手(19)が、桐朋高(東京)からアスレチックスとマイナー契約を結んで米国に渡った。

 そしてプロ志望届を提出しながら昨年10月のドラフト会議では指名されず、米金融大手ゴールドマン・サックスから入社内定を得ていた慶大元4番の常松広太郎外野手(22)はカブスとマイナー契約。同じく同会議で指名漏れした愛知・誉高のモレチ・アレシャンドレ投手(18)もフィリーズとマイナー契約で入団合意に達した。

 さらに、2026年のドラフト1位候補とされていた最速160キロ右腕・佐藤幻瑛投手(21=仙台大)も昨年末にペンシルベニア州立大への編入、27年のMLBドラフトでプロ入りを目指す意向を表明した。ただ、こうしたアマチュア選手たちに流れる海外志向の波は〝氷山の一角〟に過ぎず、スカウトの一人によると「その可能性がある1位候補の選手が現段階でも複数人いる」という。

 日本のアマチュア野球界がMLBの〝草刈り場〟と化し、優秀な人材がNPBに入りづらい状況が続くとなれば、リーグ全体に及ぼす影響が深刻化しかねない。どうにか歯止めをかける方法はあるのか…。

 CSの制度改革やWBCの放映権などに対応する「実行委員会」に携わるNPB球団の幹部は「ない」と断言。留学やプロ入り、進路をどうするかはあくまでも個人の自由であり「そういった制度を設けること自体が難しい」と苦悩に満ちた表情で打ち明けた。

 今オフのように実績十分の人気選手の流出もクローズアップされがちだが、足元にも大きな懸案を抱えている。