日本球界を代表する名将が、歴史に名を刻んだ。日本ハムで2016年日本一、23年第5回WBCでは侍ジャパンを指揮官として世界一へ導いた栗山英樹氏(64)が15日、エキスパート部門で野球殿堂入り。その功績は国内にとどまらず今や米国でも「世界一の采配を振った名将」、そして大谷翔平投手(31=ドジャース)の「二刀流育成者」として知られる存在だ。実現のハードルは極めて高いものの、米野球殿堂入りの可能性もわずかながら芽生え始めているという。
栗山氏の評価は、日本国内にとどまる話ではない。MLB関係者の間では、日本ハム時代に大谷を「二刀流」として育て上げた人物として「ヒデキ・クリヤマ」の名が広く知られている。投打の併用に懐疑的だった球界の常識を押し切り、大谷の可能性を信じ続けた指導哲学は結果的にMLB史に残る唯一無二のスーパースター誕生につながった。
米国の高評価を決定づけたのが、前回大会のWBCだ。栗山氏は代表監督として二刀流・大谷を中心に据え、決勝戦では米国代表を相手にクローザー起用。フロリダのローンデポ・パークでエンゼルス時代の同僚トラウトを空振り三振に仕留め、世界一の雄たけびを上げる――。あの大谷の象徴的な場面は米国内にも強烈な印象を残した。「二刀流を育てた男が、その二刀流でアメリカを倒した」。この物語性が栗山氏の存在を一気に「世界的名将」へと押し上げた。
そうした背景から、一部のMLB関係者の間では「栗山氏を米野球殿堂入り候補として語る声」も聞かれるようになっているという。ア・リーグの球団関係者は「大谷という存在を語る時、必ず名前が挙がる人物だ」と前置きした上で「二刀流は偶然の産物ではない。あれは明確な思想と覚悟がなければ成立しなかった。栗山氏は大谷を止めなかっただけではない。組織の反対やリスクを引き受け、二刀流という選択肢を制度として成立させた指導者だ。MLBの多くのフロントが、そこに強い敬意を抱いている。彼こそがMLBにツー・ウェイ・プレーヤー(二刀流)を定着させた功労者」と証言。その言葉が示す通り、栗山氏は単なる「日本の名将」ではなく、MLBでも語られる存在となっている。
もっとも、現実は極めて厳しい。米野球殿堂(クーパーズタウン)は基本的にMLBの歴史を顕彰する施設であり、その伝統にのっとる形で殿堂入り候補者も選出される。全米野球記者協会(BBWAA)の記者投票に名を連ねる同候補者は元選手であれば、10年以上のメジャー在籍が前提条件。監督や指導者、功労者についてもMLB球団での直接的な指導歴が重視される。昨年1月に日本人・アジア人選手として初めて米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏(52=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)は、当然ながら選考条件を全てクリアした。
言うまでもなく栗山氏にはMLB球団での監督・コーチ経験がないことから、選考基準に照らせば殿堂入りのハードルは限りなく難易度が高い。時代委員会(Era Committee)による「国際的貢献者」という特別な評価枠が設けられない限り、現行制度での実現は難しいと言わざるを得ないだろう。
それでもなお「オオタニを育てた人物」「WBCで米国を破った監督」として、その名が米野球殿堂入り候補として語られる――。この流れ自体が、過去の日本人指導者には一切見られなかった評価だ。米野球殿堂入りの可否とは別に栗山氏の存在が、日米野球史の接点に刻まれていることは疑いようがない。
日本の殿堂入りは通過点にすぎない。大谷という世界的スーパースターとともに語られる指導者として栗山氏の名前は、これからも海を越えて響き続けていく。












