金正恩総書記は元旦にロシアを意識したメッセージを2つ出した。

 ただし、ロシアを名指ししていない。まず、平壌で行われた新年慶祝行事で行った金正恩総書記の演説で、金正恩氏はこう述べた。

<遠い異国で祖国を思う熱烈な心を抱いて新年を迎えている海外作戦部隊の将兵に戦闘的敬意を表します>(1月1日「朝鮮中央通信」日本語版)。

 これは、ロシアもしくはウクライナに派遣されている北朝鮮将兵を指している。また異国に派遣された将兵とは明示していないが、金正恩氏の以下の表現で、ロシアとウクライナで北朝鮮将兵が生命を失っていることを強く示唆している。
<いつもわれわれの偉業の先頭を受け持ってくれた人民軍将兵は、昨年にもひどい苦労に耐えながら創造と変革の前衛で驚異的な成果を収め、生命をささげて勝ち取った貴い勝利をもって後世に末永く伝えるべき英雄的な年代をつくり上げました>(同上)。

 この発言を聞くと、北朝鮮の人々でも、なぜわれわれの将兵がロシアやウクライナで「生命をささげ」なくてはならないのかという、当然の疑問を持つことになる。生命をささげるに値する見返りが、ロシアから得られるはずだというのがその回答になる。

 このような表現で金正恩氏は、ロシアのプーチン大統領に対して、「北朝鮮将兵の生命の見返りとなる目に見える成果が必要だ」というシグナルを出してたのだと筆者は見ている。

 さらに1月1日の朝鮮中央通信は、「敬愛する金正恩総書記が新年慶祝行事に参加した海外作戦部隊の指揮官の家族に会い、記念写真を撮る」という記事と写真を配信した。

<われわれが対面した報と写真を見れば、おそらくわが指揮官たちが戦場で大変喜ぶであろう、愛する人々が無事に任務を遂行して帰ることをわれわれみんなが心を合わせて祈ろうとし、海外作戦部隊の全ての軍人家族と共に意義深い記念写真を撮った>(1月1日「朝鮮中央通信」日本語版)。

 国外に派遣した家族の犠牲も相当大きいので、それ相応の見返りをロシアは寄こすべきだというメッセージを金正恩氏は送っている。これらの報道は、水面下で行われている交渉でロシアが提供する資金や技術が北朝鮮の要求水準に達していないことを示唆している。クレムリン(ロシア大統領府)は、朝鮮中央通信の2つの報道を通して、北朝鮮がロシアに対してかなり不満を持っていると認識したと思う。