米東海岸の名門ヤンキースに〝激震〟が走っている。23年間在籍し、長年にわたり国際市場の中心を担ったドニー・ローランド国際スカウトディレクター(62)が、今オフをもって契約更新されず退団。ブライアン・キャッシュマンGM(58)が12日(日本時間13日)、ニューヨークからのオンライン会見に応じ「契約は満了していた。難しい決断だったが、新しい声を求める時期だ」と口にし、その事実を公表した。

 一見すれば「円満な契約満了」だが、多くの米主要メディアは「事実上の解任」と指摘。ヤンキース専門の米メディア「ピンストライプス・ネーション」は、この異例の人事に潜む「深層」に切り込んでいる。高額ボーナスを投じて獲得した有望株たちが軒並み伸び悩んでいることだ。

 その象徴とされたのが、有望株のハソン・ドミンゲス外野手(22)の存在だ。2019年に球団史上最高額となる510万ドルの契約金を与えられたドミンゲスは〝次世代のスター候補〟として大きな期待を背負って入団。しかし今季は123試合で打率2割5分7厘、10本塁打、OPS・719と物足りない成績に終わった。特にシーズン終盤はスタメン落ちが増え、将来像には不透明感が漂う結末となっている。

 それでも一部の有識者からは「ここ数年の高額国際契約で、最も成功に近い存在」と評価されているのも事実。同メディアは記事の中で、ドミンゲスの台頭と失速こそがローランド氏の退任を語る上で不可避な「議論の中心」になっていると論じている。

 実際、ここ10年のヤンキースは国際市場で巨額投資を続けながらも、期待通りの選手育成には苦戦苦闘を強いられ続けている。19年に250万ドル契約のバルガスは昨夏に解雇。23年に435万ドル契約のマイエアは3年連続ルーキーリーグで低空飛行を続けている。そして22年に400万ドルで契約したエリアスも2Aで苦戦中――。このように近年も失敗例が山積みとなっているのが現状だ。

 一方で低額契約の選手が成功例となる皮肉も続く。11年に22万ドルで契約したルイス・セベリーノ投手(31=現アスレチックス)、10万ドル契約のオズワルド・カブレラ内野手(26)などが、その代表例だ。ローランド氏は世界規模の強固なスカウト網構築を目指し、ラテンアメリカを中心に積極投資を進めた。しかしリターンが伴わず、内部では徐々に「変革」を求める声が高まっていたという。

 キャッシュマンGMは「新たなリーダーを探している」と明言。既に候補者リストを作成し、近く面接に入る予定だ。ヤンキースは今、国際市場の再構築という大きな岐路に立っている。

 ドミンゲスは、この人事の決定的要因なのか。それとも象徴に過ぎないのか。いずれにせよ、23年ぶりの大改革は、ヤンキースの未来に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。