陸上の世界選手権8日目(20日、東京・国立競技場)、女子5000メートル決勝は田中希実(26=ニューバランス)が15分7秒34で12位。2大会連続の入賞はならずも、1年前と異なる感情を抱いていた。

 ライバルたちに屈したが、田中の表情は晴れやかだった。「自分の表裏一体の部分を全部見せられた」。終盤まで大集団が形成されたレースで、田中は後方から猛追。一時はメダルも視野に入る位置につけた。「恐れにフタをしていた部分があったけど、恐れに向かっていくことができた」と振り返った。

 2024年パリ五輪は1500&5000メートルで決勝に進めなかった。かねて父でコーチの健智さんと練習方法などを巡ってもめることは何度もあった。自らの理想を探し続ける中で、進むべき道に悩んだのは一度や二度ではない。思うような結果を残せず、もがき苦しむ田中は、今大会の1年前にある誓いを立てていた。

「今まではつかむよりも、かすったり、ちょっと見えたりくらいで終わるようなところだったので、東京の世界陸上はつかむ大会にしたい」

田中希実(左)と父の田中健智コーチ
田中希実(左)と父の田中健智コーチ

 今大会の1500メートルは予選敗退。5000メートルでもメダルには届かなかった。それでもパリ五輪後の1年間を通じて、新たにたどり着いた境地がある。

「つかむというより、手放せたかなと思う。今ある環境を全て捨てることが自分にとって手放すということなのかなと思ったけど、そうではなかった。つかんで離さないとかではなくて、対等にお互いが並んで、みんな一線に立って円を描いていくようなことが大事だと気がつけた」

 結果だけを追い求めていた自分を手放し、手を取り合って歩みを進めることの大切さを学んだシーズン。田中は父に伝えたい言葉がある。

「改めてもっと一緒に強くなりたい」

 親子の旅路はまだまだ終わらない。