【中島輝士 怪物テルシー物語(54)】プロ2年目の1990年7月に私はオリックス戦で中嶋聡選手の三塁ライナーを顔面に受けてしまい、左眉の下を10針縫うケガを負いました。その中嶋が実は自主トレ仲間だったんです。彼の打球が捕球できなくて、三塁守備にもなじめなかったことはショックなんですが、自主トレでは自らを高めるためにいい練習ができました。
野球ファンの方々ならピンとくる人も多いんじゃないですかね。鳥取県の施設で「初動負荷理論」といえば…という話なのですが。このキーワードを聞いて最初に想像するのはおそらく、オリックスから米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチローでしょう。でも、マウントを取るつもりはありませんが、私たちの方があのイチローより先なんです(笑い)。
「初動負荷理論」の開発者・小山裕史さんは大学卒業後、身体理論を学び81年に鳥取市でトレーニングジム「ワールドウィング」を開業しています。小山さんはボディービルダーでもあり、自身の理論を生かして世界大会にも出場しています。
私がご縁をいただいたのはプリンスホテル野球部の時代です。我々のトレーナーを小山さんがやってくれていたわけです。そこからプロ野球選手の指導に進まれるということで、プリンスホテルの同僚だった藤井康雄(阪急、オリックス)を紹介し、自主トレを行うようになったことがプロ野球界とつながったきっかけです。
「初動負荷理論」はイチロー(オリックス、マリナーズなど)、山本昌、岩瀬仁紀(ともに中日)、岩隈久志(近鉄、楽天、マリナーズ、巨人)、鳥谷敬(阪神、ロッテ)をはじめとして、野球選手を中心に多くのスポーツ選手に浸透していきました。最初は藤井康雄、中嶋聡、私というふうにトレーニングしていたら、そのうちにどんどん増えてしまって、とんでもないことになってました。
小山さんの「初動負荷理論」は、スポーツ選手だけではなく一般の人が効率良く体を動かすために考案されたトレーニング理論です。「筋肉は鍛えるもの」という従来の発想を超え、神経と筋肉の協調性を高めるという視点からトレーニングを体系化しました。その結果、トップアスリートのパフォーマンス向上だけでなく、高齢者やリハビリ患者の運動機能改善にも活用されています。
皆さんも映像などでイチローが特殊なマシンでトレーニングしている映像を見たことがあるんじゃないでしょうか。特徴的な専用の「初動負荷マシン」は、体の動きの軌道を誘導しつつ、自然な可動域の中で適切な負荷を与えるよう設計されています。体に無理なストレスをかけず、神経系と筋肉の連動を整えやすくなり、プロアスリートにとっては動き出しや瞬発力の向上、一般の人にとっては姿勢改善や肩凝り、腰痛予防につながったりしています。
全身のしなやかさを維持し、シーズンを通して疲労やケガを防ぐ。特に股関節や肩周りの柔軟性を保てたことが、イチローをはじめ多くのプロ野球選手を長年の安定したパフォーマンスに導いた原動力となったのではないでしょうか。












