第107回全国高校野球選手権大会も佳境に突入した。酷暑の中で熱戦が繰り広げられてきたが、今大会は序盤から名門・広陵(広島)の〝暴力不祥事〟が発覚。SNSで大騒動に発展し、途中辞退に追い込まれる事態となった。他にも豊橋中央(愛知)ではエースの〝猪木顔〟が賛否を呼んで世間の関心を集めた。何かと批判の矢面に立たされる日本高野連は相次ぐ問題をどう見ていたか。井本亘事務局長(54)を直撃した。

 ――今大会は広陵の不祥事が大きな話題となってしまった

 井本氏 高校野球の中でも皆さんが目標にするような学校の一つだったと捉えると、きちんとリセットしてほしいなと思います。

 ――多くの学校が人ごとではないかもしれない

 井本氏 そう思います。だからもう1回、自分たちを見つめ直し、本当に今までのやり方がいいのかとか、変化を恐れず、僕らも含めて今の時代にフィットしたやり方をお互いに模索しながらやってもらうことが大事やと思います。

 ――今回は学校側が辞退を申し入れて連帯責任のような格好になった

 井本氏 連帯責任についてはウチはだいぶ緩めてきているし、(当該生徒の)人数で線引きしようと。できるだけ関わっていない選手の機会を奪うのはやめようという時代になっている。

 ――一方でネットの誹謗中傷が収まらず、学校関係者に危険が及んだことが辞退の一因になった。防止策は

 井本氏 ウチも炎上してますからね。これは1つの団体だけではどうしようもない。もう国がちゃんと法律を作ってくれないと、というのは皆さん思っておられると思う。たぶん難しいんでしょうけどね。

 ――フェイク情報との精査が重要になる

 井本氏 疑問の声が上がらないように学校側がきちんと加害者、被害者、関係した人にきちんと向き合ってもらって「どういうことがあったのか」をみんなが納得した上でやっていく。そしたらフェイクが発信されても「これがすべてで、皆さん納得している」と言える。そこが今回はうまくいってなかったからこうなった。自己防衛というか、野球を志す皆さんの夢が破れないよう考えないといけないです。

 ――高野連は学校側の調査を待った上で判断するということか

 井本氏 まずは学校の中で、というのは憲章のルールにも書いてあるので変わらないスタンスです。僕らだけで変えられないですが、バージョンアップしてトラブルがないよう考えていかないといけない。

 ――教訓にするしかない

 井本氏 学校は続きますし、広陵さんもこれで終わりじゃない。リスタートしてまた憧れる学校になるように頑張ってほしいですね。

 ――大会前から豊橋中央の高橋大喜地投手(3年)のアントニオ猪木さんの顔マネ〝封印〟が話題となった。高野連から注意したのか

 井本氏 あれがモノマネなのかどうか。容姿含めてみんな千差万別ですし、見ようによってはそう見えちゃうし…注意するのは難しい。我々が考えるのは相手へのリスペクトを忘れず、やりすぎはやめるようにという話。すごく判断が難しい。

 ――あれは〝セーフ〟だったと…

 井本氏 注意を受けたかどうかは聞いていないけど、甲子園では特に大きな話題にはなっていないでしょうから、たぶんギリギリ(セーフ)やったんと違いますかね。私からは言っていない。県高野連からもやめろ、とは言ってないと思いますよ。〝考えてね〟という話やと思います。相手を侮辱するようなことはやめましょう、と言っているので、あれはそうは見えない。

 ――猪木顔で気合が入るならかわいいと思うが

 井本氏 じゃあ笑顔はどうなのか、になるでしょ。ニコニコ投げる選手もいて、それが不謹慎と取る人もいる。人の感情の取りようでしょ。楽しんで力を抜いて投げているのを、相手が〝なんやねん〟という雰囲気でないなら、そこはやめろとは言いにくい。あからさまに威嚇するのとは違う。

 ――2023年センバツ大会ではWBCの〝ペッパーミルポーズ〟が審判から注意されたことも

 井本氏 それも相手の受け止めようじゃないですか。暴力、いじめ、セクハラ、パワハラ…同じ事象でも受けた相手によって変わってくる。いい人から肩をたたかれたら激励だけど、嫌な人からだとセクハラになる。世の中ってそういうものじゃないですか。やりすぎると不快につながるし、これも線引きが難しいけど「やりすぎないように」がいろんなことの前提と思います。微妙だと賛否になる。ただ、昔のように頭ごなしに言うのではなく、相手を尊重しながらうまく丁寧に導かないといけないですね。