トラック内外で注目の的だ。陸上の日本選手権最終日(6日、東京・国立競技場)、女子100メートル障害決勝は田中佑美(26=富士通)が12秒86(向かい風0・4メートル)で初優勝を飾った。2024年パリ五輪で海外メディアにも取り上げられた〝美しきハードラー〟は今後、競技外でも活躍の場を広げていきそうだ。

 大会の大トリに組み込まれたレースは、まれに見る大接戦だった。序盤は田中が先手を取ったものの、2位に入った中島ひとみ(長谷川体育施設)が猛追。最後はほぼ同時にゴールへ飛び込んだ。

 あまりの混戦に電光掲示板の表示が二転三転するハプニングが発生したが、最終的に1000分の3秒差で優勝。田中は「自分に集中することができたのが、今回金メダルをいただけた一番の理由。後悔したレースではなく、出し切ったレースだった」と安堵の表情を浮かべた。

 悲願の日本一に輝いた田中は幼少期からクラシックバレエに打ち込むなど、かねて宝塚歌劇団へ憧れを抱いていた。高校3年時には宝塚音楽学校の願書を取り寄せたこともあるほどだ。オフシーズンにはモデル活動もする〝モデルハードラー〟に対し、複数の代理店関係者は新たな可能性を指摘する。

 日本では16年に女性活躍推進法が施行され、その後複数回にわたって改正された。企業の意識も向上しており、ある関係者は「女性の活躍をアピールしたい企業にとっては、アンバサダー的な役割が向いていると思う。国内外で活躍する女性アスリートの姿は一般の人たちにも分かりやすいので」と分析する。

 さらに睡眠の重要性を唱える声が高まっている点もプラスに働くようで、別の関係者は「睡眠グッズを扱う企業はアスリートを起用するケースが多い。今年は陸上の世界選手権も控えているので、田中選手に関心を寄せる企業もあるのでは」との見方を示した。

 その田中は世界選手権(9月、東京)の参加標準記録(12秒73)に届かなかったものの、世界ランキングでの代表入りに大きく前進した。「スタートに立ったらぶちかましてやるぞという気持ちを忘れないように、絶対に緩まないという気持ちでレースに挑めれば」と気合十分だ。パリ五輪は敗者復活戦から準決勝進出。自国開催の大舞台ではさらなる高みを目指す。