殺伐としていて何が悪い! 阪神は18日の広島戦(甲子園)に3―1で逆転勝利。首位攻防戦でカード勝ち越しに成功し、1・5ゲーム差に引き離した。今回の3連戦で大きく注目されたのは、阪神・藤川球児監督(44)と広島・新井貴浩監督(48)による試合前のメンバー表交換。28日前に勃発した遺恨が、週末の虎鯉決戦をバチバチにヒートアップさせた――。
事の発端は4月20日の阪神―広島戦(甲子園)だった。鯉のルーキー右腕・岡本が投じた坂本への頭部死球に藤川監督が激高。グラウンドに飛び出すと、両軍のナインと首脳陣が入り乱れる乱闘寸前の事態に発展した。日ごろは紳士的な態度を貫く虎指揮官が、サングラス姿で広島・新井監督に食ってかかろうとする姿は、プロ野球ファンに少なからず衝撃を与えた。
しこりを残したまま挙行された今カードの第1戦と第2戦のメンバー表交換では、両指揮官が通例となっている握手はおろか、目線すら合わそうとしない「バチバチ状態」。だが、この日の第3戦前にようやくお互いの手を握り、周囲に〝和解ムード〟を印象付けた。
それでも、試合後にこのひと幕について問われた藤川監督は「それが質問に上がること自体が会見としてふさわしくない。ファンの方もたくさんいらっしゃいますから」と言葉を選びながらシャットアウト。現役時代さながらの勝負師としての厳しさを静かににじませた。
現在の現役世代の大半は平成生まれの「Z世代」。チームの垣根を越えた合同自主トレなどが当たり前となり、他球団選手同士でライバル意識をむき出しにするようなことはほとんどなくなった。だが、昭和生まれの藤川&新井両監督ら指導者世代は、NPBの人間関係が今とは比べ物にならないほどギスギスしていた時代の〝残り香〟を漂わせている。
ライバル球団の指揮官たちが不仲だったのは、ひと昔前までは当然のことだった。岡田彰布前監督(現オーナー付顧問)はオリックス指揮官在任時に、死球禍をきっかけに西武・渡辺久信元監督と因縁関係に。元阪神監督の矢野燿大氏もドラフト同期で同学年のヤクルト・高津臣吾監督を強く意識。巨人前監督の原辰徳氏も、同時代にしのぎを削り合った中日・落合博満元監督に対抗心を隠そうとしていなかった。
ただ、代表格は何といっても巨人・長嶋茂雄元監督(現終身名誉監督)とヤクルト・野村克也元監督(故人)のライバル関係だろう。野村氏の腹心として打撃コーチを務めていた本紙評論家の伊勢孝夫氏は当時をこう述懐する。
「長嶋さんが巨人の監督にカムバックする直前の頃の話や。キャンプで(長嶋氏の長男)一茂の打撃指導を長嶋さんにお願いしてお招きしたんやけど、こっちの『段取りミス』で長嶋さんとノムさんが同じベンチに座る形になってしまってな。2人とも背を向け合ったまま座って、一切口を開こうとしなかったわ(笑い)」
ヒマワリと月見草の間で板挟みになった伊勢氏の胃痛はまだまだ続く。
「そしたら長嶋さんが、ノムさんがつえ代わりに使っていた専用のノックバットを勝手に手に取って『伊勢く~ん。やっぱりこの打ち方だよねえ~』って素振りを始めてな。俺も生きた心地がせんかったわ(笑い)」
「新井と球児。確かに人間的には合わないところもありそうやなあ」とニヤニヤした顔でこの3連戦を振り返った伊勢氏は「ええやないか、多少は殺伐としてても。勝負事なんやし」と両者の〝危険な関係〟を昭和の野球人らしく豪快に笑い飛ばした。













