【取材の裏側 現場ノート】新日本プロレス53年目の「旗揚げ記念日」3月6日大田区大会のメインは王者・後藤洋央紀(45)と挑戦者・棚橋弘至(48)のIWGP世界ヘビー級王座戦に決まった。

 世代交代が叫ばれて久しい新日本マットにおいて実現するベテラン同士の最高峰王座戦に、新世代戦士のふがいなさを感じるのか、盟主団体の選手層の厚さを感じるのかは、人によって意見が分かれるところだろう。個人的にはキャリア22年目でついに悲願のベルトをつかんだ後藤と、来年1月4日東京ドーム大会での引退を控える棚橋の2人に対する期待は大きい。

「暗黒時代」の時期についての明確な定義はないが、2人が初めて両国国技館でIWGP戦を戦った2007年11月はまだまだ苦しい時期だった。今や社長となった棚橋は「時効だから言いますけど、実数2200(注・主催者発表は6500人)でしたからね」と、当時の観客動員を苦笑交じりに振り返る。

 しかし、当時30歳の棚橋と28歳の後藤が繰り広げた31分22秒の魂の戦いは、空席の目立つ両国に確かな熱を生んだ。「奇跡的な歓声というか、2200の声量じゃなかったんですよ。そこから新日本プロレスがどんどん上向いていったっていう」(棚橋)、「かつて俺たちの戦いから盛り上げた自負が俺にもあるので」(後藤)と声をそろえ、この試合を暗黒時代から脱却したターニングポイントと位置づけている。

場内を大熱狂させた棚橋弘至(左)vs後藤洋央紀(2007年11月11日=両国国技館)
場内を大熱狂させた棚橋弘至(左)vs後藤洋央紀(2007年11月11日=両国国技館)

 新日本はコロナ禍以降再び苦境に陥り、今年の1・4ドームは翌5日大会との2日連続開催だったとはいえ、2万4107人と昨年の動員を大きく下回った。それだけに棚橋は「もう1回盛り上げて(いきたい)ってタイミングで、棚橋 vs 後藤があるっていう。偶然なのか必然なのか分かりませんけど、僕も意味を深読みしてしまいますよね」と闘志を燃やす。

 新日本に垂れこめていた暗雲を切り裂いた2人が、約17年の月日を経て何をもたらしてくれるのか。決してノスタルジーに浸るわけではなく、これこそが体力、技術、精神力のみならず時に〝人間力〟をも問われるプロレスというジャンルを楽しむ醍醐味だと思っている。(プロレス担当・岡本佑介)