【プロレス蔵出し写真館】「なめるな、このガキ」。激怒した前田日明は、そう吐き捨て控室へ引き揚げた。
これは今から29年前の1994年(平成6年)7月14日、リングス大阪大会で行われた前田VSディック・フライ、ランキング戦での一幕。
試合序盤、フライは掌底からローキック。前田も掌底の連発で反撃して、フライはカウント6のダウン。さらにデスロックでロープエスケープを奪った。フライは掌底のラッシュを仕掛けヒザ蹴り。前田はタックルで倒してスリーパーホールドを決め、フライは2度目のロープエスケープ。
前田はミドルとハイ、蹴りのコンビネーションを繰り出すフライの左足をつかまえると、強引にひねり倒した。体が半転してうつ伏せに倒される瞬間、フライはマットを3回叩いてタップ(写真)。2分54秒、レッグロックでケリをつけた前田は、うつ伏せ状態のフライの背中にストンピングを見舞った。
この行為にフライは激高。セコンドのハンス・ナイマン、レネ・ローゼが血相を変えてリングに上がり前田に詰め寄る。成瀬昌由や坂田亘、高阪剛は体を張って必死になだめた。リング上は大混乱。いつのまにか前田は鼻血を出している。
リングサイドで撮影していたが、前田がなぜここまで怒っているのか、まったくわからなかった。
控室に戻った前田はマスコミをシャットアウト。後から引き揚げてきたフライは、今にも前田の控室を襲いかねない雰囲気だったが、周囲になだめられた。
その後、囲み取材に答えた前田は、「掌底、全部目に入っていて◎△$♪×(早口で聞き取れず)。(指を開くポーズで)みんなこうやって(掌底)やってんだから」。前田は、フライが掌底で親指を立てていたことを怒っていたのだ。目に入ると危険だと…。
それでも「試合終わって蹴ったのはアンフェアでした。すいませんでした。リングス本部から減俸処分でもなんでも結構ですから」と反省し、「10年分キレたな。ちくしょう。まだガキだ」。自嘲気味につぶやいた。
「今日のオランダ勢は、ちょっと男らしくない」と前田が続けた。
第1試合でゲオルギ・ガンダラッキーと対戦したローゼは、ニーパットを着用していないヒザ蹴りを繰り出した。これは反則なのだが、再三のレフェリーの注意を無視した。セミファイナルでヴォルク・ハンと対戦したナイマンも反則蹴りを繰り出していた。
「あれは完全につま先。普通ならあそこでアウトだけど、ハンは逆十字いって。今日はハンの技術的というよりもガッツに敬服したい」(前田)
さて、落ち着きを取り戻し、反則のストンピングを繰り出したことを反省した前田はフライの控室に赴いた。ものすごい形相で前田を睨みつけるフライ。
前田が謝り、再戦を約束してこの場が納まったのだった。
後年、前田は東スポコラムで「リングス・オランダの監督者である(クリス)ドールマンが来てない時で、(オランダ軍団の)友達みたいなキックの選手が観光気分でくっついてきた。それで友達の前でカッコつけようと思ったのか、オレ以外の試合でも掌底の時に目を突いたり、反則があったりすごい荒れたんだよね。こいつら調子に乗ってるな、なんとかせんとあかんなって思いがあったんだ」。それが、あのストンピングだったと明かしている。
ところで、レッグロックと発表されたフィニッシュホールドは〝神様〟カール・ゴッチ直伝の「フッキング」というものだったとも語り、技が完全に決まれば関節は破壊確実だという。ひねり倒されたフライが顔をゆがめ、即座にタップしたのも納得だ。
前田〝らしさ全開〟。ベストバウトに入る一戦だった(敬称略)。【プロレス蔵出し写真館】の記事をもっと見る













