伝統球団は復活するのか。2年連続でBクラスに沈んだ巨人は阿部慎之助監督(44)が新たに指揮を執り、4年ぶりのV奪回を目指す。監督就任1年目から必勝の十字架を背負う青年指揮官は、いかにチームを立て直そうとしているのか。本紙評論家・前田幸長氏に強調したのは「割り切り」の重要性。ナインに「見逃し三振」を指令するなど〝脳内改革〟を図る捕手出身ならではの真意とは――。
【前田幸長 直球勝負】沖縄・那覇キャンプを訪れて少しホッとした。巨人は特に「勝利」と「優勝」が求められる。しかも3年間も優勝から遠ざかっている。原前監督の後を受けた阿部監督にかかる重圧は相当なものだろう。OBの一人として心配していたが、そんな思いは一瞬で消え去った。
グラウンドで再会するなり「プレッシャーは今のところありません」と満面の笑みで迎えてくれた。もちろん、本当の勝負は3月29日から始まるシーズンということもあるだろう。開幕すれば勝負が付きまとい、負ければ〝外野〟からいろいろな声が飛んでくる。それも巨人の監督の宿命だ。
ただ、阿部監督はそうなることも想定済みのようだ。「いろんなことを言われるんだろうなあって覚悟しています。言われないようにとか思っていたら何もできなくなる。『3連敗したら他のところで全部勝てばいいんじゃないですか?』って言ってやろうかと思ってますよ。落合(博満)さんみたいに」。やはり長くチームの大黒柱として戦ってきただけに肝が据わっている。
昨季までヘッドコーチや二軍監督などを経験し、指導者として原前監督から多くを学んできたと思う。そこで個人的に思うのは「阿部慎之助らしくあってほしい」ということ。その一端を彼の指導法から感じ取ることができた。チームが低迷した要因に挙げたのは「割り切りのなさ」。ミーティングでは「それができないからBクラスなんだ」とも言ったそうだ。
「割り切り」を植えつけるための代表例が「見逃し三振指令」。個人名は伏せるが、ある選手に「見逃し三振して堂々とベンチに帰って来い」と指示したにもかかわらず、三振を怖がるあまりバットを出したのだという。そうした割り切りのなさが、打者だけでなく投手にも根づいていると感じていたそうだ。
そして、この「見逃し三振指令」には〝捕手監督〟らしい意図も隠されている。
「ぶざまな三振をするぐらいなら見逃し三振で全然構わない。その後、どうふる舞うか。『普通に帰って来い』と言っています。見逃し三振をして普通に帰られたら、相手のキャッチャーとピッチャーが勝手に考えてくれるんですよ。真っすぐを見逃せば『あれ? 変化球を待ってたのかな?』とか。そうなったら次の打席にもっと面白い勝負ができるんです」
堂々と三振することを次の打席に生かす。相手のバッテリーを考えさせ、揺さぶりにつなげようとするのはいかにも捕手らしい発想だと感じた。大変な状況で監督を引き受けた阿部監督がどんな戦いをするのか、見守っていきたい。
(本紙評論家)












