破壊なくして創造なし――。巨人・阿部慎之助監督(44)がまたもや球界に一石を投じた。7日の宮崎春季キャンプで初のシート打撃が行われたが、これまでの慣例を打ち破る異例の〝ぶっつけ本番〟。準備段階をすっ飛ばすいきなりの実戦形式となったわけだが、そこにはどんな狙いがあったのか。阿部監督の側近が打ち明けた理由に「アベイズム」が色濃く反映されていた。
この日行われたシート打撃にはドラフト1位・西舘勇陽投手(21=中大)、同2位・森田駿哉投手(26=ホンダ鈴鹿)、同5位・又木鉄平投手(24=日本生命)ら新人投手が次々と登板。又木は主砲・岡本和をチェンジアップで遊飛に打ち取るなど、打者6人を相手に完全投球を披露した。
とはいえ新人投手が打者相手に投げたのはこの日がプロ入り後、初めてだった。野球界では開幕までの調整方法はある程度決まっている。投手の場合はブルペン投球→ブルペンで打者を立たせる→フリー打撃の打撃投手→シート打撃→実戦登板という流れ。打者もこれに合わせる形で〝生きた球〟に段階を踏んで慣れていく。だが、そうした段階をすっ飛ばした格好だ。
メスを入れた理由を阿部内閣の参謀役である二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチ(47)を直撃すると「(野手が)ボールに慣れるのは実戦をやりながらでいい。あんまりブルペンで(ボールを)見たところで(意味がない)。投手にもフリー打撃の打撃投手が苦手な選手はいる」と説明した。
そのため首脳陣は選手の結果にはある程度、目をつぶった。阿部監督は「(投手が)打たれたからって、何がどうなるわけでもない。バッターもボールを見られることもそうだし、今自分が試してることも、あそこで十二分にやってもらって、失敗してもらったほうが僕はいいと思う」とうなずいた。
ダメなら即二軍降格では選手には余計な力が入ってしまう。指揮官は「一、二軍の入れ替えはできるだけ行わない」と公言。目先の結果に左右されず、自分のやるべき課題に集中させる狙いだ。
チーム内からも今回の試みを歓迎する声が上がっている。「野手の立場で言えば投手がフリー打撃に登板しても、打たせようとしているのか、抑えたいのかがあいまいになる。だったらシート打撃や紅白戦のほうがはっきりと勝負のスイッチが入る」と古株の球団関係者はメリットを強調した。ナインも柔軟に対応し、第1打席でいきなり左前打を放った岡本和は「ちょっと難しさもありましたけど、なんとか打てたので良かったと思います」と力を込めた。
就任1年目から4年ぶりのV奪回が至上命令となる阿部監督。キャンプの休養日に行われていた新人選手の恒例行事もやめて完全オフに変更した。慣例や球界の常識にとらわれることなく、独自の改革で前進を続けている。変化を恐れない青年監督が打ち出した今回の〝新機軸〟はシーズンにどんな影響を与えるのか。












