【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】今回は、久しぶりにニューヨークのタイムズスクエアから筆を執っている。ア・リーグMVPを授賞した大谷翔平投手の〝英語スピーチ〟で大いに盛り上がった全米野球記者協会(BBWAA)NY支部主催のアワードディナーに出席させてもらったのだ。

 初めてのことだったので協会メンバーでもチケット325ドル(約4万8000円)という高さにやや驚いた。それでも「大谷選手のスピーチを生で見て来てほしい」という日本のデスクの指令を受けて西海岸から出張で行かせてもらえるなんて「大谷効果」に感謝だ。「ブラックタイ」というドレスコードの下、野球の取材現場ではまず着ないドレスやハイヒールに身を包んで気張って参加したが…案外、ゆるっとしていて結構楽しかった。

 言うなれば、豪華な花飾りのない披露宴に出席した感じだろうか。ホテルのダンスホールで10~12人の丸テーブルに座り、テキパキと運ばれてくるアボカドの乗ったサラダ、牛フィレ肉のロースト、チョコレートムースの3コースディナーはおいしかったし、登壇者の多くが記者協会に敬意を払ってくれ、なんだか1年の労をねぎらってもらった気分。往年の選手がゲストでいたりと同窓会的要素も満載だ。ただ披露宴と違って飲み物代は別途かかったので懐にはやや痛い。

 個人的にはアワード受賞者を紹介するプレゼンターのスピーチを聞けるのが、参加特権ではないかと思った。皆、まるで面白さを競い合うかのようにベタ褒め、小話の嵐!

 大谷紹介スピーチで前アストロズ監督の名将ダスティ・ベイカーは「バットのマジシャンだったイチロー」に始まり「リトルマツイとビッグマツイ」ときて「ノモにはやられっ放しだった」で終わるかと思いきや「クールなシンジョー」まで飛び出した。チーム再建に一役買ったオリオールズのブランドン・ハイド監督への厚い感謝を込めたマイク・エリアスGM兼副社長による紹介なども心に残った。

 ただし、この日一番のハイライトは、相席した須藤ご夫妻とのご縁。私が入り口で知人の「順子さん」と勘違いして声をかけたら、その人の名前も偶然「順子さん」だったという日本でもなかなかない出会い方をしたご夫婦。偶然は続くもので、ディナー席もお隣だった。

「たまたま大谷選手のスケジュールに関するユーチューブを見ていたら、食事会でニューヨークに来ることを知ったんですよ」と夫・和義さん。1981年に商社の仕事でニューヨークへ来たというアメリカ大先輩のお2人だが、大の大谷ファンである順子さんのために検索すると、記者協会のページからチケット購入が可能であることを発見。「彼女を驚かせようと思って、その場ですぐ買ったんです」。それが2日前で「一緒に食事ができるよ」と順子さんを招待したのだと言う。

 順子さんは「まさかそんな簡単にアワードディナーに参加できるなんてだまされているんじゃないかと思った」と目を白黒させていた。そんなエピソードを話してくれた夫婦の大谷選手を間近で見られた笑顔が本当にすてきだったので、あっという間に午前0時を過ぎてしまったが「また来たい」――。そんなふうに思えるイベントだった。