自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金問題で、立憲民主党は11日、松野博一官房長官の不信任決議案を提出した。岸田文雄首相は13日の国会閉会後に、松野氏ら安倍派の政務三役15人を全員更迭する内閣改造や党役員人事を行う予定。一方、党内では松野氏が官房機密費という〝裏金〟に最後っ屁で手をつけるかどうかに注目が集まっている。

 党内最大派閥の安倍派を巡る裏金問題で、国会閉会を2日後に控える永田町は大揺れ。参院本会議の2022年度決算の質疑では野党から岸田首相に任命責任が、安倍派の閣僚である松野氏や西村康稔経産相に裏金疑惑の事実関係や認識がそれぞれ問われた。

 岸田首相は「政治の信頼回復と国政の遅滞回避のため、しかるべきタイミングに適切な対応をとる」と述べ、週内にも人事刷新を図る考え。松野氏は「一般論として、犯罪に当たるか否かは個別具体の事実に即して、法と証拠に基づいて判断されるべき」と従来の答弁を繰り返した。

 立憲の安住淳国対委員長は1000万円超の裏金を受け取った疑いがある松野氏に対し「とにかく連日の記者会見がひどすぎる。日本政府の代表として、世界に発信されると本当に恥ずかしい。日本政府が本当に傷つくから、一刻も早くお辞めになったほうがいい」と松野氏への不信任案を提出。他の閣僚や幹部の追及、内閣不信任案の提出は状況を見て、判断していくとした。

 そんな中、立憲の泉健太代表の「X」(旧ツイッター)の投稿が自民党内をザワつかせている。泉氏は10日「松野官房長官、まさか、まさか、辞任の際に首相官邸の官房長官室の金庫から#官房機密費を持ち出すことはしないだろうな! 過去、何度も金庫が空になったと聞く。岸田総理、そんなことは絶対に許されないぞ」と投稿した。

 これに今年6月に立憲を離党した無所属の松原仁元国家公安委員長は、Xに「これはただのいちゃもん誹謗中傷。早期に撤回なさるべきかと」と忠告。ネット上では「民主党が下野した時も空になったと聞いた」「本人に直接言うべき」「泥棒扱いはよくない」とカンカンガクガクとなっている。

 官房機密費は時の首相の女房役となる官房長官が取り扱えるおカネで、歴代内閣では月1回、1億円を受け取り、次回まで使い切るのが慣例だ。使途は国会対策や機密情報の提供者に使われているとされ、領収書も不要のためにブラックボックスになっており、後に国庫からの支出状況だけが公開される。

 政治とカネの問題がクローズアップされる中で、麻生政権の官房長官だった河村建夫元衆院議員や鳩山内閣の平野博文元官房長官らが最近、メディアの取材に官房機密費について、口を開いている。

 平野氏は週刊誌の取材に、金庫から札束を手づかみしていたと述懐。使途については「情報提供をしてくれた相手との関係が悪化し、情報が入って来なくなる」と10年以上たった現在でもかたくなに口を閉ざし、余ったカネを国庫返納した際には「周囲からバカにされましたよ。自分の〝ポケット〟に入れてしまえばよかったのにって」と答えている。

 永田町関係者は「松野氏が官房長官に就任したのは、岸田政権が誕生した一昨年10月。それまでは安倍派の事務総長で、ある意味、裏金の実態を知り、差配していた疑いもある。少なくともこの2年は自由におカネを使えたわけで、官房長官になると分かれば、裏金づくりにいそしむ必要はなかったわけで、皮肉なものです。辞めるまでは官房長官として、官房機密費を使える訳で、自民党内では手を出しかねないと心配していますよ」と指摘する。

 官房機密費に関しては「内閣官房機密費の性格上、お答えを差し控えたい」との回答がまかり通るとあって、事実上の更迭処分となる松野氏がどのように〝裏金〟を扱ったとしてもすぐには追及できない事情がある。

 松野氏はこの日、自身の進退について「与えられた職責を果たしていきたいと考えている」と繰り返したが、果たして金庫にカネを残していくのか、空にして、官邸を後にするのか――。