自民党安倍派(清和研)の政治資金パーティーの収支報告書への不記載による裏金問題で、岸田文雄首相は安倍派の閣僚、副大臣、政務官や党幹部を更迭する準備に入った。今後、焦点は東京地検特捜部がどこまでメスを入れるかだが、派閥解散にもなりかねない安倍派は〝お通夜状態〟となっている。

 自民党主要派閥による政治資金パーティー収入の不記載問題で、最もボロが出たのが安倍派だ。同派トップである塩谷立座長、5人衆といわれる松野博一官房長官、萩生田光一政調会長、西村稔康経産相、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長の幹部6人もキックバックでの裏金疑惑が持たれている。

 キックバック額はさまざまで、一部報道では直近5年で松野氏、世耕氏、高木氏は1000万円超、萩生田氏、塩谷氏は数百万、西村氏は約100万円とみられている。また大野泰正参院議員は5000万円超、池田佳隆衆院議員と谷川弥一衆院議員は4000万円超とみられている。安倍派では長年の慣習としてキックバックの不記載での裏金づくりが横行しており、派閥全体の総額では数億円に上る可能性がある。

 特捜部は臨時国会が閉会する13日以降に疑惑が取りざたされる議員を任意聴取し、捜査に本腰を入れる予定だ。

「アッコにおまかせ!」(TBS系)に出演した元東京地検特捜部副部長で、元自民党の若狭勝氏は収支報告書への記載漏れは修正が可能とあって、「議員が会計責任者に『記載しないでいい』と命令した証拠をつかまないといけない」と立件までのハードルは高いと指摘。それでも特捜部が見逃せば批判の矛先は自分たちに向けられるとあって、額が大きい議員を起訴するのではないかとした。

 立件の目安になるのは、昨年12月に議員辞職した自民党の薗浦健一郎元衆院議員の例だ。薗浦氏は政治資金パーティーで得た計4100万円を収支報告書に過少に記入し、会食費などの支出計800万円分も記載しなかった政治資金規正法違反(虚偽記入、不記載)で略式起訴され、東京簡裁から罰金100万円、公民権停止3年間が確定している。

 自民党関係者は「数百万円なら記載漏れで修正報告で済むところですが、薗浦氏の場合は約4900万円とケタが一つ多く、事件化した。ポイントは疑惑が取りざたされた薗浦氏は特捜部の聴取後に罪を認め、議員辞職した。一定の社会的、道義的責任を果たしたとして、略式起訴でおめこぼししてもらっている」と指摘。若狭氏は2000万以内なら立件しないのではないかとしている。

 4000万円とされるキックバックを受けていたとされる大野氏ら3人の立件はもはや避けられないとみられる。1000万円超の中には松野氏や世耕氏らのほかに橋本聖子元五輪相の名前も挙がり、10人以上に上るとみられ、今後、この金額がどれだけ膨らむかが焦点になりそうだ。松野氏や世耕氏ら幹部が起訴され、公民権停止となれば、安倍派はもはや瓦解は避けられない。

「安倍元首相の死去後に噴出した旧統一教会問題で最も関与が深かったことに加え、今回の裏金疑惑は致命的。幹部連が一掃されれば、派閥はもたずに草刈り場になるのでは。党内の関心は誰が特捜部やメディアに情報をリークしているのか。『安倍派を売ったユダは誰だ』となっている。安倍派の衰退は本来、他の派閥には好都合だが、この問題は人ごとではないために戦々恐々としてますよ」(同)

 岸田首相は安倍派全外しの大ナタを振り下ろし、局面打開を図るつもりだが、安倍派からの反発も必至。党内の派閥抗争はどんな展開を迎えるのか――。