超名門で育まれたエースの矜持がある。ソフトバンクの今秋ドラフト1位・前田悠伍投手(18)は、春夏通算9度の甲子園優勝を誇る高校球界の横綱と称される大阪桐蔭で1年時から主戦を務めた逸材。幾多のエリートが淘汰されてきた超名門校で才能を開花させ、世代ナンバーワン評価でプロ入りを実現させた背景には、洞察力にたけた18歳のある気づきがあった――。
対話する相手の目を真っすぐ見て、自分の考えを快活に答える姿は社会人出身の選手のようだった。先日、球団と仮契約を締結した際の会見。前田は「ソフトバンクのエースになるという目標の中には、長い間活躍するという目標もある。そのためには人間性の部分もしっかりやっていかないといけない」と言い切った。報道対応の中で、何度も口にしたのが「人間性」だった。変に丁重になりすぎるわけでもなく、堂々とした振る舞いの中に他者への敬意があふれている。
エリート集団にもまれる中で育んだものがある。大阪桐蔭は、中学球界で名の通った有望選手が毎年20人前後入部してくる。前田は全寮制で寝食をともにする中で、仲間たちの信頼を勝ち取り、飛躍する選手の資質を見抜き、自ら実行に移してきた。「人間的によくないと思う選手もいます。でも、そういう選手は大事な場面でミスをしたり、ここぞで一本打てないというのが出てくる。出ない選手もいると思うが、いずれは必ず出てくる。やっぱり(見てきた先輩たちを含めて)私生活がしっかりしている人がだいたい活躍していると僕は思いました」。全国有数のエリートたちが淘汰される世界。埋もれる才能と開花する才能の差を知る18歳が、人間力を大事にする理由だ。
前田は自身の〝エース像〟をこう語る。「エースというのは野球以外のこともしっかりしていないといけない。エースというのは誰からも見られている存在。見られている意識を持ち続けないといけない」。ゴミ拾いや整理整頓は当たり前のこととし、モットーは「人を大切にすること」。
前田がピンチを招いたり、痛打を浴びた時ほど、バックの仲間が奮起する――。手を差し伸べられる存在を意識してきたのも、大阪桐蔭の3年間で得た教訓の一つだった。「やっぱり野球だけをやっていてもダメだなと。それが高校生活で一番学んだことです」。かみ締める言葉には、高校生とは思えない説得力がある。
馬淵ジャパンで臨んだ9月の「U18W杯」では、大谷翔平(エンゼルスFA)らも成し得なかった日本の初優勝に大きく貢献した。前田はいずれも強豪の米国、韓国、台湾戦に先発。決勝では完投勝利を挙げ、計16回2/3を投げて1失点と世界を圧倒した。投手中心の守り勝つ野球を標榜する日本の絶対エースに君臨。極限の緊張状態で好パフォーマンスを連発する姿は、大阪桐蔭で「大事な場面で結果を出す人間」の資質を培ってきた成果だった。
「U18W杯」に全スカウトを派遣し、面談での前田の振る舞いにハートを打ち抜かれたソフトバンク。小久保新監督は高卒1年目の一軍デビューにも期待を寄せている。常勝再建を目指す鷹に「近未来のエース」を託したくなる左腕が入ってきた。












