阪神は28日の日本シリーズ第1戦(京セラドーム大阪)に8―0で完勝。村上―山本の両軍エースの投げ合いとあり、戦前にはロースコアの接戦を予想されたが、終わってみればワンサイドゲームで重要な初戦をもぎ取った。本紙評論家の伊勢孝夫氏は、勝敗を分けたポイントして5回無死一塁から一走・佐藤輝が仕掛けた初球スチールに着目。球界最高峰の鉄火場の中、大胆かつ迅速な決断で戦局を動かした岡田彰布監督(65)のタクトを絶賛した。
【伊勢孝夫・新IDアナライザー】希代の策士と呼ぶべきか、それとも大ダヌキと呼ぶべきか…。岡田監督の采配が日本シリーズ初戦から冴えに冴えわたった。前日27日には初戦の入りを重視し「普段通りの野球はできない」「まず探る」と発言。初戦の入りを重視し、慎重な姿勢を示したものだと私は解釈していたが、全くの逆だった。勝敗を分けたのは5回の攻防。ここでいきなり大胆な仕掛けに出た。
先頭・佐藤輝の中前打で無死一塁とし、打席にはノイジー。犠打のサインがないことだけは予測できたが、ここで一走・佐藤輝がまさかの初球スチールを成功させ、無死二塁とチャンスを大きく拡大。日本球界最高の右腕・山本から一挙4点を奪うビッグイニングの足掛かりを、自身の采配で演出した。
村上―山本の投げ合いとあり、誰もがロースコアの接戦をイメージしていたであろうこの一戦。ノーアウトのランナーは大切に、慎重に次の塁へ送っていくだろうと、オリックスベンチもイメージしていたはずだ。助っ人のノイジーに初球から直球を投げ込むのはバッテリーとしてもリスクが高い。案の定、山本が投じたのは内角低めへのフォーク。捕手・若月としても捕球および二塁送球が最も難しいコースと球種だ。岡田監督はここまで読み切って佐藤輝に初球スチールのサインを出したのだろうか。だとしたら、その決断の早さにはただただ脱帽するしかない。まさに百戦錬磨の将ならではのタクトだ。
山本もやはり人の子。0―0のタイトな投手戦において「1点もやれない」という重圧の中、佐藤輝が得点圏に進んだことで、徐々にペースを崩していく。ノイジーは右飛で一死三塁。ここで先制の中前適時打をマークしたのは、この日「7番・DH」としてスタメンに名を連ねた渡辺諒。現状の阪神打線から考えれば、指名打者には糸原か小野寺がチョイスされると思っていただけに、スタメン発表時には少々面食らった。だが、こちらの起用も見事に的中した格好だ。
佐藤輝の初球スチールと渡辺諒のDH起用。2つの〝博打〟をものにした岡田阪神は、山本の攻略にまんまと大成功し、重要なシリーズ初戦を見事にもぎとった。オリックスとしては自慢の大エースが完膚なきまでに打ち崩された(6回途中7失点)ショックも大きいだろう。改めて岡田監督の指揮官としての器の大きさを思い知らされた一戦となった。(本紙評論家)












