選定が難航していた野球日本代表・侍ジャパン新監督候補に中日、巨人で活躍した井端弘和氏(48)が一本化されていることが24日に分かった。大会連覇を目指す2026年3月開催の「第6回WBC」までの任期ではなく、あくまでも暫定的に指揮を執る形で、その上で今後の国際大会ごとに手腕を“都度評価”していく変則的な流れになるとみられる。有力候補との調整がつかず大きく難航していた代表監督の後任問題がひとまず落ち着く格好となったが、その舞台裏で一体何が起こっていたのか――。

 次期日本代表の最有力候補となった井端氏は、かねて「侍」と深い関係にある。現役時代に侍ジャパンの一員として2013年の第3回WBCにも参加。現役引退後にはコーチとして日の丸を背負い、稲葉監督の下でベンチを支えながら21年の東京五輪で代表チームを金メダル奪取へと導いた。その後はU―12日本代表監督も歴任。持ち前の野球観と指導力には定評がある。

 オファーを受諾して井端監督が誕生すれば、初陣は11月に開催される第2回アジアプロ野球チャンピオンシップとなる。24歳以下、入団3年目以内の選手で主に構成される大会で“若侍たち”の特徴をとらえた育成力に期待がかかる。

 監督選考を担う侍ジャパン強化委員会はこのアジアチャンピオンシップを初陣に、来年11月開催のプレミア12、26年春の第6回WBCをひとくくりに選定を進めてきた。だが、今回の人事はひとまず井端氏にアジアチャンピオンシップを託し、来秋のプレミア12までは同氏の手腕を見極めながら任期に幅を持たせていく方針とみられる。

 3年後の次回WBCを率いる監督の最終決定は今回の選定作業において見送られる形となった。球界内で代表監督選定のあり方を見直す意見が多かった中で、水面下で実現が望まれていた「暫定監督」プランが結果的に採用された格好だ。

 日本球界の最大目標は言うまでもなく次回WBCでの世界一連覇。そこで「勝てる監督」がタクトを振ることが最も望ましい。とはいえ、人事は当事者のタイミングも大切だ。代表監督は名誉ではあるが、有能な人材を3年もの間“縛る”形になる。次回WBCでの大会連覇が「当然」とみられる風潮に加え、こうしたさまざまな背景こそが候補者たちにとって大きなネックとなっていたのも事実だ。

 有力候補の一人とみられていたソフトバンク前監督の工藤公康氏(60)は退任後にセ・パ複数球団から水面下で指導者オファーを受けるなど抜群の実績ゆえに多方面からも引く手あまたの存在。他にもイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)や松井秀喜氏(現ヤンキースGM特別アドバイザー)、高橋由伸氏(元巨人監督)、西武やレッドソックスなどで活躍した松坂大輔氏らも次期監督候補として浮上し、紆余曲折を経た苦肉の策として前指揮官・栗山英樹氏の続投プランまで取り沙汰されたが、どの“妙案”も「結局まとまることはなかった」(球界関係者)という。

 それもあって「そもそも代表監督を引き受けられる人材は数多く候補を挙げられるものではなく、確かな実績と手腕を有する限られた者が担うのが本来の筋」という嘆きの声が、NPB監督経験者レベルの間でも漏れ伝わっていた。計り知れないプレッシャーや長期間の拘束が重荷となり“誰も引き受けたがらない”流れになりつつある代表監督人事の名誉を取り戻すためにも「暫定監督プラン」の遂行は今後のビジョンを固めていく上でもプラスに傾くとみられる。

 息詰まった状況で3年後のWBC監督を選定するのは、選ぶ方も選ばれる側にとっても好ましくはない。「暫定監督」を据えて時間的余裕をつくることで、任期中のプロ野球監督やタイミングの整わなかった実績者にも選択肢は広がる。そして無論、井端氏が次期監督就任を引き受けて自らのタクトと統率力で満天下に実力を示せば、その後の道が開ける可能性も大いにあるだろう。

 日本球界はまず井端ジャパンで再船出し、26年WBCに向け「勝てる監督」で臨める体制を今後も引き続き構築していくことになる。