【18年ぶり「アレ」の真実(中)】 阪神・岡田監督が言った「普通のこと」とは実際のプレーでは何を指すのか――。何度も指摘された守備力の向上に焦点を当てれば、何をしてきたかが浮き彫りとなってくる。指揮官就任直後の高知・安芸で行われた昨年の秋季キャンプ。このころの岡田監督が毎日のように口にしていたのが「反復練習」だった。信条とする「守り勝つ野球」を実践するため、守備強化に多くの時間を割いた。

 ただし、特別なことをしたわけではない。繰り返したのは、野球をする上でできなければならない「当たり前のこと」だった。昨季までの矢野前監督時代で多くのウエートを占めたのが送球面でのミス。正確性を高めるべく、秋季キャンプでは質だけではなく量も求めた。

 シートノックの「ボール回し」では内野手が塁間の距離で送球を徹底的に反復。本塁を起点に一塁→二塁→三塁→本塁と回す基本動作だけでなく、対角線の塁への送球に加え「10周ノーエラー」「〇秒以内」などさまざまな制約を設けた。すべては試合の中での「当たり前」をとことんまで突き詰めるためだった。単調な練習の連続に悲鳴を上げるナインも少なくなかったが、効果は絶大だった。

 本拠地・甲子園は土のグラウンドで他球場に比べてファウルゾーンも広い。失策数そのものを減らすことは至難の業。それでも「取れるアウトを確実に取る」ことを徹底させ、守備力アップは成績にも表れた。

 19日現在、守備でマークした併殺数は「123」。リーグ3位だった昨季の「117」を早くも上回ったばかりか、12球団トップの成績となっている。それだけ捕球や送球に隙がなくなった証しと言える。また、今季は一塁で固定起用された大山の巧みなハンドリングも光った。ショートバウンドした送球を何度も処理し、内野陣には「投げ損ないがあっても、低めなら何とか捕ってくれる」との安心感をもたらした。

「低め」を徹底させたのは外野陣も同様だ。肩の強さに関係なく、塁上への送球は内野のカットマンを経由することを徹底させた。“あわよくばアウトにできる”や“独り善がり”な大遠投をなくし「低く速い送球」でつなぐ意識を植えつけた。そうすることで内外野の連係も格段に向上。昨季まで散見された送球間において相手に余計な進塁を許すケースも減った。

 内外野の連係が結実した一例が8月8日の巨人戦(東京ドーム)。2点差に迫られてなおも無死一、二塁のピンチを迎えた8回。岡本和の中越えの打球を処理した「中堅手・近本」→「遊撃手・木浪」→「捕手・梅野」とつなぎ、一塁走者の秋広を本塁でアウトにした。同点には追いつかせず、1点リードのまま逃げ切りに成功。岡田監督が言った「普通のこと」でディフェンス力は飛躍的に向上した。