ソフトバンク・武田翔太投手(30)がブルペンの一角として貴重な戦力となっている。先発としてスタートしながら2戦2敗と振るわず、6月からチーム事情もあって中継ぎとして一軍再昇格。現在7試合連続無失点中で、接戦での強さを取り戻したチームを陰で支えている。

 現在の持ち場は勝ちゲーム、劣勢の展開、回をまたいだロングリリーフと“何でも屋”に近い立ち位置だ。シーズンは長い。盤石な勝ちパターン投手を揃えるだけではペナントを制することはできない。序盤に先発投手が崩れた試合や中盤以降のビハインドゲームをひっくり返して、どれだけ星を拾えるか。劣勢の展開をはね返すには流れを持ってくる中継ぎの存在が不可欠で、その役回りを武田は担っている。

 高卒1年目から8勝を挙げるなど「エース候補」として周囲の大きな期待を受け、ここまで通算66勝。工藤公康前監督をはじめ多くの指導者が、そのポテンシャルに疑問の余地を挟むことはなかった。元来、雄弁な男は「今はもう、気持ちで押し込んでるって感じです」と心中を明かす。開幕前に思い描いた姿ではないはず。実力者の短い言葉には、覚悟がにじむ。

 武田の紆余曲折を見守ってきた斉藤和巳投手コーチはここまでの過程をこう語る。「はたから見てきた期間も含めて、今が一番、目の色を変えてやっているのかな」。武田の能力を買うがゆえに、歯がゆさを抱えてきた一人だった。「俺は“腫れ物”とか関係ないからね。目一杯向き合って話すから。それで嫌われたらしょうがない。それくらいの気持ちで一度、武田とは話をした」。尻を叩くのは、期待の裏返し。持ち場で全力投球する姿に成長を感じ取っている。

 プロ12年目、転機を迎えているのかもしれない。「持ってる能力からすると、先発でってところも『頭の片隅には残しておこう』という約束はしている。ただ、今季はこの形でいくかもしれないって話もしている」(斉藤コーチ)。今を充実させれば、必ずその先があるはずだ。